ベランダ

怪物のベランダのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

是枝監督も坂元裕二も自分の経験したことを昇華させた作品を作ればいいのに。

何が問題なのかまだ上手に整理できずにいるが、朧げながら。

当事者じゃない案件を想像力で作った作品であって、普遍的なもの(小学校高学年あたりで抱く内的葛藤)として扱ったらマイノリティが辛い思いをするということがわかっていない。それこそ怪物化してしまった作品なのではないかと思われる。図らずもタイトルは製作側もだよねという。汗

母親・教師・子ども…とそれぞれの視点から描いており、「中立に作ってあるからどの立場の気持ちもわかるはずだよ」…と仕立てている風ではあるが、実は作り手はマジョリティのエリアに居て、特に最後のシーンではマイノリティを美化することでマジョリティを正当化する結果を強めることになってしまった。

マジョリティ側が作っていて差別する側の言い訳(事情があってやっているんだよ…が強調されている感じ)に満ちているのに、麻痺して思考停止しているからその構造に気づけない。誰のどの言動をどの分量切り取るかという匙加減で作り手の価値観は表現されてしまうので中立な作品なんてあり得ないと思う。それぞれの視点と言いつつも、大人・マジョリティの時間配分が大きいことも多数決的にマイノリティがおされてしまう結果を生み出す。そんな感じでこの作品はマジョリティを気持ちよくさせる作品となっていて、マイノリティにとってはショックであるが、いつものことなんで麻痺して受け入れてしまうことになりがちだ。

私がいじれるならば作品そのものが社会の反映になっていることをエンドロールでネタバレさせたい。そうするなら演技もすごいし見せ方もすごいから社会を変えていく力が爆発するのにな。

あと、まあ、他作品でもそうであるが、私のPTSDのフラッシュバックのトリガーになる描写がいくつも散りばめられており、感情が大きく揺すぶられ、エンドロールのころにはボーッと何が起きているのかわからない状態になってしまった。

以前の私だったら、荒れた上、数日寝込んで居ただろうな。過去の私はそれくらい問題を見えるようにしてくれるすごい作品なんだと受け止めてきたが、今回はネタとして使われた?気もしてきた。

当事者がこの作品を作ったとしたらさっき書いたエンドロールで大どんでん返しするか、子ども&マイノリティパートを9割くらいにして、大人やマジョリティ側が少数意見であるかのように仕立てて正当化要素を見えるようにする。子どもやマイノリティが引き受けている負担があぶり出てくるようなこっち側からみた作品にするんじゃないかな。(まだ考え途中だけど)

-------このあとはネタバレ含む-------


銀河鉄道の夜のモチーフを使うのは、ズルい気がする。
大人が追い込んだ場所なんだから。
銀河鉄道でジョバンニとカンパネルラが体験したことを匂わせるがちょっと違うんじゃないかな。

今回のは追いつめたその先の場所なのだから、そのように表現すべきでは?まるで生贄を美化して殺した側が罪悪感を抱かなくても済むようにしているみたいだ。
2023/06/13 07:23
ベランダ

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