ベランダ

ポエトリー アグネスの詩(うた)のベランダのレビュー・感想・評価

4.7
家父長制の世に若い(特に十代の)女性はどうやって生き延びてきたのだろうか。

日記を遺して社会に投げかけた意図は揉み消され、無念にも永遠の絶望の中に封じ込まれようとしている被害者の存在に気づいた主人公。

加害者となった孫が、既得権で守られ、何もなかったかのように家父長制を支えて生きていくのは我慢できないと主人公の心は動き出す。

権力者がやわらかな美しいものを傷つけ食い荒らし、お金で解決する場面を見ないで育つ人はいないだろう。

主人公の7歳違いの姉はどんな人生を歩んだのだろう。主人公が波乱万丈という自分の人生も。そういった被害者だけでない家父長制被害の集合的無意識の力も後押しし、話は進んでいく。

心の声を拾っていく困難さも描かれていて、自分としては励まされる。主人公の決意がこの結末をつくったのだが、途中どこかの場面から胸がギュッとして涙が静かに流れていた。私の胸の中にある苦しさが流れて出てきた。
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