うるぐす

怪物のうるぐすのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
5.0
監督是枝裕和、脚本坂元裕二、音楽坂本龍一。
この3人の天才たちの共作。そして安藤サクラもとんでもない天才。

2017年に是枝監督と坂元裕二さんのトークショーが早稲田であって、その時の2人の相思相愛っぷりがとにかく凄くて、お互いの作品の好きなシーンを語り合っていたのです。プロの視点の細やかさに感動して、ほんの一言、一文があるのとないのでは印象が変わる、細部に神は宿るということの意味をその時に深く知りました。
天才同士の共演はうまく行く場合もあるが失敗することももちろんあって、今回間違いなく傑作になるだろうと思った反面、少しわかりにくい作品になったりしちゃうのかなと思ったりもしたけど、結果、あまりにも見事な傑作でした。

三幕構成になっていて、新しい視点になるにつれ、そのたびに観ている僕の気持ちはどんどん変化していって、登場人物に「ごめん」という気持ちにさせられ、「そういうことやったんか…」となっていく。この一つの視点で全てわかった気持ちになって善悪を判断してしまう。これこそ「怪物」につながってしまう可能性がある。そんな風に見せて誘導する脚本がとにかく見事。やはり坂元裕二、圧倒的すぎる。ラブストーリーも抜群に良いけど、『問題のあるレストラン」のような社会提起的な作品の坂元裕二はえげつない。
そして、脚本が面白い、じゃなくてこの映画がめちゃくちゃ面白いってなったのは、この坂元裕二の脚本に真っ向から是枝監督が勝負したからなのではないか、と思っていて。子役の演出がとにかく上手いのは『万引き家族』はじめ過去作で証明し続けてるけど、今作の素晴らしさよ。もう、最後の方なんてすごすぎてもう一生鳥肌。なんかもうずっと頭の中で流れるくらいに好きなシーンがあって。間違いなく是枝作品の最高傑作。

見終わったあと、すごいいろんな話をしたくなった。大切な誰かと観に行くべき。1人で行っても誰かとシェアしてほしい。可能な限り、この映画で得た感情、感想を大切にして生きたい。
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