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怪物のryoのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

怪物はどこにいるのか。
怪物などいない。
なら、目の前にいる、この怪物みたいに見えるモノは何なのだろうか。
タイトルバック。夜の闇の中で燃え盛るビルは、あのカットが示す通り『怪物』の象徴なのだろう。皆、犯人を噂するがストーリーの中に犯人などいない。『怪物』だけが恐怖心を煽りながら赤々と燃え続ける。
『私達』は主観の中で完璧を勝手に決め、そこから外れた者を「怪物」とみなす。しかし、完璧でない自分も他者からは怪物の姿をして見えているなんて夢にも思わない。作中のセリフであるように「テレビだから(客観的な真実が)分かるだけでしょ」。
自分の主観だけは特別製で、テレビを見るように客観もできると信じ込んでいる。
ゲームという形で問われる「私は何者ですか?」。この問いは全ての人に投げかけられているのだろうと思う。
重要なのは「お前は怪物だ」ではなく、「私は何者か?」なのだろうと感じた。(他者に押し付けられた「私」ではなく、「私」という事実を私が受け入れるということ)
「何も変わらないよ」
「そっか、良かった」
最後に主人公二人がこの『ゲーム』を『クリア』して走り出す。さらに『暗がり』を抜けカメラ(大人たちの視点)も追い越し光に向かって走り去る(カメラは子供たちの背中を見送ることになる)。大人や社会の同情も侮蔑もどんな思いも振り切って。美しく、素晴らしいラストカットだと感じた。

坂元裕二の脚本が先にあったようだけど、基本的なスタンスや子供たちのシーンも含め、最初から是枝監督に合わせて作っていたのかなと思った。
他の是枝作品と比べてドラマチック度合いが良くも悪くも2割増しくらいのイメージ。

クィア・パルム賞のネタバレの件が少し残念だったが、それでもそういう事は大した事ではないと感じられる良い作品だった。

田中裕子の終盤のセリフは非常に感動的だった。
やはりというか、子供たちもとても良かった。
素敵な映画。
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