まとぅん

怪物のまとぅんのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.7
耳に残るキーフレーズ
「怪物だーれだ」
是枝監督作で昨年カンヌ脚本賞も受賞し、注目していた作品を漸く鑑賞🎬


ー大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、食い違いから次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう…


↓ネタバレ含む❗️


○3つの視点で巧みに構成されている。
①湊の母親早織
②湊の担任教師保利
③湊と同級生星川(+校長)
先入観にしてやられる。事細かに散りばめられた妙な伏線が3つの視点を通して、次第に合わさっていく。
ひょんな噂話・違和感・偏見・私情・同調圧力が各々の間で絡み合い、歪められては各々にとっての"怪物"が生まれていく。
また、一人一人この人はどんな人かと注目し、自然と感情移入させる。この人にとってコイツはまるで怪物だ、、、とか。

つまり、人類皆怪物たる心があるというわけだ。最初の①母親視点だけで、かつ憶測で「コイツヤバ教師じゃん…」って思わせてからの、②教師視点で「あれ?良い教師?」と思わせる構成に、自分の愚かさを思い知った。上っ面だけで決めつけるお前も怪物だ🫵と突き付けられたようで…

異なる視点の中で一致する、ビルの火事現場と"怪物の鳴き声"のような不気味な音もそれぞれに挟み込まれているが、それらが視点の切り替えとして働き、その謎も徐々に明らかになっていくのも面白かった。


○「穿つ」
⭕️物事の本質や人情の機微を的確に捉える
❌疑って掛かるように捉える
「穿つ」という言葉は、よくある使われ方は誤用らしい。元々は上記の意味だそうです。
今作は「穿つ」の本来の意味を念頭に置きつつ、多視点に本質を捉える見方の必要性と困難さを同時に伝えている気がしました。
しかし、そもそも私達は現実に"穿った"見方は出来ているだろうか?

嵐に巻き込まれた湊と星川の結末は、観客に委ねるものとなっているが、簡単に明るい未来を想像することが出来ないのもまた、よく作られているなぁ…と思いました。
無意識な大人達の性を意識させる発言が彼らの首を絞めていたと思うと、ラストに眩しくキラキラしてはしゃぎ合う2人はもう…😥
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