まとぅん

オッペンハイマーのまとぅんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
ついに観てきた。日本での公開すら怪しかったが、無事に公開されて感謝。
何も観ずに批判していた人達は、観てから言えと思うね。全く原爆賛美ではない。ロバート・オッペンハイマーという人と彼の目線に映し出される苦悩よ。
前作『TENET』は核爆弾誕生後の世界、そして今作はその生みの親に焦点を当て、ノーラン監督自身がおそらく重要視する問題なんでしょう。

史実を基にしている分、ノーラン監督作品としてはそれほど複雑ではないかと思いきや、
白黒・カラーで時系列が絡み合い、加えて専門的な量子力学用語も多く、学生時代物理が苦手だった自分にはお眠な時間もあった😇
が、後半にかけての畳み掛ける展開には見入ってしまった。あとキャストが豪華すぎる。
予備知識無いと全く頭に入って来ないので、wikiでもYouTubeの予習動画でも観てからの方が良い。



ー第2次世界大戦中、才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマーは、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらにはそれが実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するようになるが…



↓ネタバレ含む❗️



○投下後や聴聞会で詰められ、これからの核の扱い方に葛藤するオッピーの顔面アップと圧迫するような足踏み音が印象的。とにかく静と動の音響が凄まじかったです。
オッピーの奇行、愚行、心の脆さを所々挟み込んでいた所も、後の聴聞会での証言にもつながっていましたね。
次々と出てくるオールスター級の俳優陣の演技合戦は眼福。(ピューさんはあんなに体張らなくてもよかったんじゃ…題材なだけに笑いは堪えた😅)

○原爆の完成した瞬間は、かなり複雑な感情だった😔
もしここで失敗していたら…と考えたが、どこかの国で誰かの手によって完成するのも時間の問題だったのだろう。
元はナチスドイツより先に!という想いで始めた実験も突如目的を失い、完成した後は権力者により抵抗できない学者の無力さ、そして大量の命を奪った兵器が自分が開発したものであるという罪悪感。投下により大衆が歓喜するシーンには、原爆の脅威と被害を直視できないオッピーと共に自分もかなり精神的に苦痛な時間だった。


○責任の所在は、核を作った者か、核を使用する者か。
専門用語と人物の多さに混乱するが、核で平和を傲慢に掴み取ろうとする、逆説的で愚かな人間に恐怖する。あんなに心の脆かった人が世界を破壊できる兵器を作ってしまったことにも。
そして、原爆から水爆への発展など、ひとつの開発から世界の歴史をも変えてしまった。保有国が牽制し合う核抑止の状況が続き、いつ破壊されるか分からない世界に生きる私たち。オッピーが言うような「核爆発の連鎖反応により世界を破滅させる可能性」は"ゼロ"ではない。
学校図書から「はだしのゲン」が閲覧制限をかけられるなど、未来ある世代に核の脅威が語り継がられなくなっている昨今、再び関心を持たせる一作となる。R15だけども。
日本人が、というより全人類が観てモヤモヤすべきな気がする。
まとぅん

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