マニ

みなに幸あれのマニのネタバレレビュー・内容・結末

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

和製ミッドサマーを目指した成れの果て。

古川琴音目当てで鑑賞。出ずっぱりで幸せだった〜。でもそれ以外はヒドくて不幸だったので、図らずしも幸不幸の天秤が釣り合い映画の内容とマッチするという幸でも不幸でもない奇跡。

「幸不幸は同量」というアイディア自体は面白いしホラーに落とし込むのも良いけれど、力量不足で持て余しているのが残念。わかりやすさ重視のおどろおどろしいBGM、シーン切り替えで包丁どん、傷だらけの写真、「コロシテ……」。使い古された演出と凡庸すぎるオチ。不気味さの演出だとしても酷すぎる演技。何より「インパクトのあるシーン」を数珠繋ぎにしているだけで関連性がないのはあまりにも不誠実だと思う。

警察に行くでもSNSに投稿するでもない主人公、生贄の存在とは関係のない奇行を繰り返す祖父母、生贄いなくてもまぁまぁ生きられる幼馴染の家、世捨て人なのにVR思想の伯母、真っ昼間の一本道で人を轢いてしまうおっちょこちょいな近所の人。全体を覆う「筋の通らなさ」が興ざめでした。

「生死」と「幸不幸」の線引きもちゃんとしてほしい。生きるために生贄を捧げているのに死が迫っても焦らないのは意味がわからない。緊迫感の欠如の要因でもあると思う。

良かったところも一応書いておくと、開放的なロケーションと固有名詞の排除。どこからでも見通せる平坦な畑で真っ昼間から起こる異常が、あの村での日常であるという狂気。"孫"や"幼馴染"など登場人物に名前がないことで「特殊な家族」ではなく「どこにでもいる家族」として描いているのは良かったです。

あと序盤の白いスーツケースが汚れることで主人公の未来(純白の喪失)を示唆しているとか、最初と最後でおばあちゃんを助ける/助けないで変化を見せるとか、支離滅裂なこの映画の中ではわかりやすくて良かったです。


[その他なぐり書き]

・出産。幼馴染の首絞めと対比なのはわかるけど、幼馴染は死んでいないので生死の対比になっていないのが腑に落ちない。

・最後のカーテン女性。恨めしそうに見ている=カップルに嫉妬している? それを見た主人公は自分の幸せを噛み締めている?

・呪いの発動条件。父母ともに呪われているので血筋ではなく家系が条件なはず。その家で生贄を捧げれば、その家のものは救われる。祖父母の「本当にあなたを思っている」や父の「どこに逃げても同じ」発言から察するに、東京で呪われないのは生贄のおかげと解釈できる。じゃあ味噌は別に食べなくてもいい? 美味しいから食べてるだけ? あと家系が条件なら主人公は嫁げば呪いから解放されるのでは????

まぁ真面目に考えるほど作り込まれた映画ではないのでしょうけど……。

タイトルが大好きなので仕事で「お疲れ様です」の代わりに「みなに幸あれ〜」と言って苦笑いされる日々を送っています。私に幸あれ。
マニ

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