くう

波紋のくうのレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
4.0
主婦であり母である人は誰でも、ヒロインに同情し同調するであろう……。

そして、この光石研劇場(笑)

主演の筒井真理子さんだけではなく、あらゆる映画やドラマで活躍し、出演していらしたら「おっ」と思いながら注目してしまう名バイプレーヤーをわんさか集めたキャスト。見応えある。


ヒロインの夫はクズだとしか言えず、それをどう受け止めるか苦悩の道を歩む中年女性。


独立した息子、クズだけれど帰って来た夫、思い通りにいかない孤独な家。


結婚していれば、子どもがいれば、家があれば、孤独な老後を過ごさなくても良いわけではない。


家族の単位が重かった昭和から個人主義の令和へ。家族の存在と在り方を考える。


食われているのはオスだけではないはず。

他のユーザーの感想・評価

けろえ

けろえの感想・評価

3.8
得てして人間なんてそんなもの。

そんな人間や出来事がいろいろと。

まあなんかやっぱり最近狂ってますよね、なにかと。って実感させられました。なんかちょっと途中から内容がぼやけちゃったけど。

あとやっぱり、女は怖いわー。

ところで3回くらい出てきた例の踊り、笑っていいところですよね?腹抱えて笑いたいくらいだったんですけど、周りが誰ひとりと笑ってない…。他にも笑えるシーン沢山あった…。

と、いうことで、筒井真理子さんの怪演がいちばんの見どころかなー。
かなりの劇薬映画で、
かゆいところに手が届くなぁ〜!
という印象でした。

筒井真理子だから出来る役どころであり、彼女だから画がもっているとも言えるかもしれません。

しかし、生意気ながら欲を言えば、
もう少し、あとちょっとで大傑作になるところだったなぁと、漠然とした悔しさも感じてしまいました。

とはいえ、面白いです。映画館の大画面でアクション映画を見るのもいいけれど、こういう映画こそ、大画面で見て、スクリーンからの風圧を感じてほしいなぁと思いました。
と

との感想・評価

4.0
静かな作品だけどブラックコメディとして成立してるのはキャストと演出の力かな。地味に不愉快なシーンがひたすら続くのだけどこれがおもしろい。
新興宗教にハマる主人公の主婦、突然蒸発して10年後にガンになって帰ってくる夫、障害者差別、スーパーのクレーマー、細かいのも挙げたらキリがないけど主人公家族とその周辺で起こり得るものとして上手くまとまってる。
ラストは何がどう爆発するのか楽しみにしてたら予想の斜め上の展開で驚いた。まさかBGMが伏線とは。でも個人的にはあからさまな天気雨も含めてすごく好きなオチ。主人公の気持ちがよく表されてると思う。
m

mの感想・評価

3.8
久々に映画館で映画を観た。
1人で映画館で映画を観るこの時間が自分を大切にできている感じがして好きだし必要だなと改めて。

思っていたストーリーとは違っていて、なるほどな!という感じ。ブラックジョークがちりばめられていて笑えた。
毒は毒なんだけど、ゴリゴリと精神を削り取られるやつではなくて、ブラックユーモア満載で笑いたっぷりでした。
ツボにハマって、まぁずっと笑ってました。
どのシーンもメチャ小技が効いてて笑えるけど、点滴のシーンが一番サイコー!

普通にしてても、ただでさえ常に何かどこかに含みがありそうな表情の筒井真理子さん(大好き)。
この映画はその彼女の持ち味が存分に120%発揮されてるのではないでしょうか。
あの怒りと蔑みがこもった眼!!
あれ、誰にでも出来るものでは無いですよ。
ゾクゾクして来る。
そこを見事に引き出した、萩上監督の演出と脚本もとても良いですね。

また、共演の方々も皆一筋縄ではいかないクセ強な人ばかりで、これは飽きないわ。
かっこいい!

ポスタービジュアルからわかるように歌舞伎の拍子のようにカンッ!と出てくるタイトルからしてかっこよい

傍から見ればどこか壊れてる筒井真理子だけど、しみじみ「わかる」と唸りたくなる共感の嵐

最後もかなりカッコ良い
すみ

すみの感想・評価

5.0
いやあ、面白かった。大好きな俳優さん勢揃いでした。筒井真理子かっこいいなあ、平岩紙の笑顔が怖い😱。
全てに爆発しつつも大人しくしてるんですよ、女は。あの気持ちものすごくわかる。身勝手な夫、何も考えてない息子、死ぬまでエロいジジイ、スーパーでのクレーマー。そこに漬け込んでくる宗教。
ラストシーンで飛んだな😁。
takae

takaeの感想・評価

4.0
絶望を笑え。

いやー面白かった!荻上直子監督が「これまでで最高の脚本」と自負する絶望エンターテインメント。この意地悪さ、シュールでブラックな笑い。めちゃくちゃ好みの作品でした。

「良妻賢母」「家父長制」
これらの言葉や伝統に未だ縛られがちな現代社会。女は家を守り、良き妻良き母でいるべし。介護は女の仕事。

筒井真理子演じる主人公の依子も、決して望んでいる訳ではありませんが家事や義父の介護に勤しむ毎日。

そんな中、突然夫が失踪。⁡
その後もしっかり義父を介護し最期まで看取るって、女はこうであれという社会からの同調圧力や世間体によるものも少なくないような気がする。
そして、心の平静を保つため新興宗教に救いを求め、穏やかな暮らしを取り戻しつつあった彼女の前にある日突然長いこと失踪していた夫が帰ってくるー

突如帰ってきた夫の存在は、宗教という目に見えないものを信じ、拠り所としてきた彼女の生活やその心にポタリとどす黒い感情を落とし、その波紋は徐々に大きく拡がっていきます。

何も言わずに勝手に出て行き自分の都合で帰ってきた夫を受け入れることができるのか。
舞台挨拶でも登壇したキャストのお姉様方が大盛り上がりで「絶対に家に入れないわ~!」って話していましたが(いっそんタジタジで可愛かった)自分だったらどうするだろう?

気持ちとしては「は?お前よく帰って来れたな🗡」って完全に相手の存在をスルーしたい。でも、宗教にすがり何とか心に広がる波紋を押さえつけようとする依子の気持ちも少しだけわかるかも。
それはもしかしたら、いわゆる「良妻賢母」という言葉の呪縛によるものなのかもしれないとも思いました。

他にも、パート先のクレーマー、息子が結婚相手の障がいのある彼女の存在、諸々のストレスが積み重なり、依子の心の波紋は抑えられないほど広がっていく。
人って結局互いに影響を与え合うもの。関わらずにはいられないもの。それによって人との繋がりができることもあれば、心の中に負の感情が広がり、またそれが相手に影響していく...の繰り返しなのかも。

それが、家族とか職場とか知り合いとか、まるで箱庭のような狭い世界の中で行われているからきりがない。
そんな箱庭のような世界で巻き起こる、介護、貧困問題、新興宗教、障がい者差別...そういった様々な社会問題をブラックユーモアという切り口で描き、笑いに昇華させる手腕が恐ろしいほど秀逸。

笑えないけど笑ってしまう。というか、もう笑うしかない。まさに『絶望を笑え』!
そしてラストのカタルシスたるや...!もう謎の爽快感と開放感、興奮で泣けてくる程でした。この抑圧からの解放は女性だからこそ感じるものなんだろうか。男性の感想も気になる。

そして今回、俳優陣が実力派揃いでそこもかなり引き込まれました。主演の筒井真理子さんのお芝居には本当に痺れる!すごい表情するんですよね...ラストシーンは何度でも観たくなるほど圧巻。
依子の心に大きな影響を与えるキーパーソンである木野花さんがまた最高だし、夫役の光石研さんの土足で踏み込んでくるような絶妙なウザさも◎
そして息子役の磯村くんは、共感と反感の絶妙のラインの表現がすごく上手かった。他にもキムラ緑子さん、江口のりこさん、柄本明さん..と本当に全員実力派で全員ヤバい。

笑ったら不謹慎と思っても思わず笑ってしまう絶望エンターテインメント。これはかなりオススメです。
tzremk

tzremkの感想・評価

3.8

このレビューはネタバレを含みます

顔芸、目線、佇まい、距離感、間、言葉の端々…。人間の闇の部分の詰め合わせ。
筒井真理子の独り舞台だが、共演している舞台女優陣が豪華過ぎる!ラストの舞いにも天晴!!
くそ面白かった、上半期トップです。
なにもかも刺さりまくった

ラストシーンの一連の流れはくそ笑いました最高

「人間だけが神を持つ」
とあるアニメからの受け売りですが宗教ってほんと面白いなと感じました

あるけどない、ないけどある。枯山水の水を模して作られた波紋はまさに神さまと同じでしたね
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くうさんが書いた他の作品のレビュー

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4.0

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ドキドキハラハラのお手本が全部詰まりまくった1本。

ああ本当に面白かった!

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