銀幕短評(#719)
「ボーはおそれている」
2023年、アメリカ。2時間59分、公開中。
総合評価 推定30点。
きのうが封切り日でね、でも3時間のながい映画だから 金曜日の夜が遅くなるからと、きょう土曜日の朝イチの上映を予約しましたよ、わくわくして。しかし、映画館に着いてみると おおきな小屋には客が5人しかいません。そして映写開始後2時間がたって、そのうちひとりが静かに席を立ちましたよ。それがわたしです。
出だしはよかったです。幻想のような数々のシーンも すてきでした。ホアキン・フェニックスのファンなので、「インヒアレント・ヴァイス」72点の名演を期待しましたよ。しかし、かれの演技は “おそれ“の表現に一点集中しました(すくなくとも、わたしが着席のあいだは)。それ以外の表情や芝居をたのしむことができなかった。わたしは上映の途中で、時計を3回見ました。これは異例です。つまり映画の終了までの残り時間をカウントしたのですね。
森のパートで大きな爆発が起きたところで、もうがまんできずに席を立ちました。ちょうど2時間たったところで。こまかいギャグは おもしろいものもありましたが、つまらないものがとても多かった。ボーはすべての事象におびえ、さけび、逃げ、けっして立ち向かおうとしなかった。あれは わたしの知っているホアキンではない。
同時に、エマ・ストーンの「哀れなるものたち」の美術や意匠や音楽をいちいち連想し回想しました。かれわれの洗練度の差に ためいきがつづきました。ベラはあれだけ自由で勇敢で誠実だったのに。たぶん このふたつの映画を逆の順番に取り違えて(つまり本作をさきに)観ていたら、完走できたとおもうのですが。
さいごまで観たかたに教えてほしいのですが、あの森の爆発のあとで ストーリーは好転したのでしょうね? 弱腰ホアキンの決意はかたまったのですよね? 母が生きているかどうか? そんなことはどうでもいいことです。