タコ社長

君たちはどう生きるかのタコ社長のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.5
ちょうど会社が休みだったので、ここは行くしかないだろうとと、公開初日の朝の回を予約。

初めてのキネカ大森…びっくりするくらい弊社ビルの近く…もう休日にも会社近く来るなんて社畜かよ…

キネカ大森…ミニシアター好きが好きな感じの映画いっぱいやってるし、朝のコーヒー半額だし最高やな。

そして本日の盛り上がりのピークは片桐はいりと大九明子のサイン色紙…

そう、あまり本作はピンとこなかった。
以下辛口なコメントが続く…




初見、駿のテリーギリアム感が増している…と思ったが、そんな例えで誰かを喜ばせる気にもなれず、宮崎駿、引退のタイミング逃したな、という気持ちでいっぱいである。


正直宮崎作品はもののけ姫以降、あまり興味が持てていない。丸みを帯びた描写に変えたのは若年層をターゲットしたからだろうが、千と千尋、ポニョ、…とあまりピンとこない。

若年層を意識した描写や作品作りが本当に成功しているのか疑わしい。

トトロや宅急便、ラピュタについては子供の頃にも見たが大人になっても見れる魅力がある。どうも今の描写というかタッチは、大人になってまた見たいと思えない。

それに本作でもそうだが、世界観を伝えきれておらず、ダイジェストのようになってしまい、作り手の思想が目立つ結果となっている。つまりエンターテイメントの魅力が欠落している。

ラピュタやトトロのように、エンターテイメントという軸がしっかりある上で、ストーリーを展開するような構成は、もののけ姫や千と千尋で完成されたのに、ポニョ以降破壊が始まり、本作もまたエンターテイメント要素がやや少ない気がする。

冒頭から時代が戦中戦後の何処かとわかる。
主人公がお母さんと叫ぶ。主人公とお母さんの話だ。もっと言えば、唐突に失われた人間関係の残像とどう向き合うかといった話だと思う。

本作、主人公真人が異世界に入るまでに1時間使っている。しかし本作で最も没入感を阻害しているのは、異世界での時間なのだ。バランスが悪い。もっと異世界に上映時間を割くべきである。そして観客が異世界に馴染んだところで観客と課題を共有しクライマックスへ向けて全力で突き進んでいく…そうした構成が本作まるでない。どんどん新しい要素が出てきて観客が置いていかれる。

しかも異世界に登場するあらゆるものが何らかの作品のコピーに見える。同じ人が作ってるんだから仕方のない事かもしれないが、それを観客が気づく時点で、映画としてはどうなんだろう?と思ってしまう。

異世界において一番雑なシーンは大叔父のところへ行くまでの部分だ。安直で創造性に欠ける。さらに大叔父のキャラクタや世界秩序を語る積み木やの腹に浮かぶ大きな石のくだり、まるで昨年のテレビアニメSonnyBoyのような既視感がある。

大叔父を登場させる必要があっただろうか?
主人公と母、2人目の母との話ではなかったか?異世界を説明するために無理矢理色々な要素を追加して収拾がつかなくなっている。

のらりくらりと絵コンテを描いたのだろうか?正直鈴木プロデューサーが言う、何も宣伝しなかったらどうなんだろう?なんて実験的チャレンジではなくて、単に製作スケジュールが推しに推して宣伝を打ち出す時間がなかったのではないか?と思える。

さらに主人公のキャラクタが単調である。葛藤しているはずの内面の変化が全く触れられておらず、まるで村上春樹の小説のセリフのようだ。

主人公の父親は戦闘機の部品を作ってるようである。風立ちぬと世界線が交わっているのだろうか。


一応異世界についての話も書いておく。

異世界=主人公の(駿とかの)頭の中の妄想の世界でありネタをプールして保管している場所、だと思う。

そこには夢の中で見るような潜在意識が働く奇妙な現象も起こるし、死んだ母親もそこにいる。母親の人生はそれでも幸せであったと思いたいという気持ちの昇華が異世界での母親となっている。

大叔父は幼少期から今に至るまで駿が異世界を構築してきた駿自身。現実世界で何か問題があると想像の世界である異世界に一旦逃げ込み、滋養を得て現実世界に帰る。そういうプロセスの一つが今回の作品だと思う。

駿に限らず誰でもやっていること。13個の積み木がジブリ作品を表しているのはそうかもしれないが、この作品の本質がジブリという組織に関するものとは思えない。駿にとっては積み木が作品だっただけ。

誰しも自分が集めてきた異世界でのコレクションが、現実世界の自分と乖離してくることがある。異世界に逃げ込んだ時にこれまで自分を助けてきたものに効果がなくなってくるものがある。それでも異世界の秩序を守り殻に籠るか、そんな異世界を捨てて現実世界に戻るか。

これは人が現実世界で大きな問題に直面した時に直視し難い現実を如何に受け入れるかを語った映画だと思う。



#余談
父の声を完全に竹野内豊だと思っていたので、エンドロールになかった時は唖然とした…お、おい、何処へ行ったユタカ…そして、あいみょん!あいみょん!おぉ…

映画館を出て答え合わせをしないとスッキリしない…とそのまま売店へ。パンフレット…何⁈公開してしばらく経たないと販売されない⁈

駿の復活を期待する。