東佳苗

君たちはどう生きるかの東佳苗のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

一斉に問題用紙が配られて、しかも答案用紙は無い 

全ての芸術は鑑賞者の体験と更新される知識欲と感受性の交わるところに問いを投げる
よって鑑賞者が"見た"だけでは映画は完成しない 

回答用紙に何も描けなくて不安になるのか
解ろうと徹夜で考えるも解らないのか
解った頃には大事な人は居ないのか
その答えには飽きたものが石を崩すのか
問題を解こうとすると、
どんどん無か 死に 近づいてきてしまう

仏教の教えや悟りは1日にして"解る"ものではないことに近い 

不思議の国の中に散りばめたメタファーは、解釈ではなく体験を必要としている、
だからこそ私たちは問われている
走馬灯と預言と独り言の入り混じるところが
映画、芸術だった

同時に、自らを赤子に戻すようなもっと根源的で私的な本能の愛がベースにあったことが嬉しく、欲の部分に熱を感じた

過去作の私小説的な部分も含めて、
作品や、監督自身を偶像化、神格化していることすらも問われているようだった

日本において宮崎駿監督作品は義務教育のようなものだとして、最期の模試かもしれない映画を受けて、私たちは好機に転換していけるのか 

偉大な芸術家たちの終活を観ると、数日はぼんやりしてしまう 
シンエヴァの時と似た、この作品以前/以後感。 しかしより物静かな、禅を感じた

この体験は自分だけの記憶になり、いつか忘れる そういうものを生涯作ってきたという、諦念があった

いつかどこかの道で拾ってきた御守りを握り締めて、各自、生活に戻る
東佳苗

東佳苗