ろいろい

君たちはどう生きるかのろいろいのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

💠favorite line💠
"お母さん!!!"

🎞️story&information🎞️
戦争真っ只中、火事のために母親を亡くした少年・牧眞人。
数年後眞人は、父親の再婚相手である眞人の母の妹・夏子がいるお屋敷に引っ越すことになった。
屋敷に到着すると、まるで眞人を待っていたかのように飛び回る1匹のアオサギ。
「助けて」と母の声で話しかけてくるその異様なアオサギを仕留めようとする眞人は、窓越しに夏子が森の方へ歩いて行くのを見て――。


監督は宮﨑駿。

プロデューサーの鈴木が2023年6月に宣伝を一切行わない方針を明らかにしたことで話題に。
主題歌を担当したのは米津玄師。2019年に宮﨑が『パプリカ』を聴いたことがきっかけで制作を開始し、4年かけて楽曲を完成させた。

ちなみに2013年公開の「風立ちぬ」を機に宮崎駿の長編映画製作からの引退が発表されたが、2017年に撤回された。
本人曰く「自分は引退中であり、引退しながらやっている」らしい。
2023年2月下旬の初号試写では宮崎が「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました」と発言。

🎞️review🎞️✐✐✐✐✐✐
2023年に上映された冒険活劇ファンタジー作品。

宮崎駿監督が『風立ちぬ』以来10年ぶりに手がける長編アニメーション作品。
普段は様子見してから映画館に足を運ぶのだけど、気になりすぎたので見てきました👀

ひと言でいうと【ジブリのごった煮】

実は、吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』が原作ではなく、
同小説は主人公にとって大きな意味を持つという設定のみで、実際はオリジナルストーリーのファンタジー作品。

主人公は、『もののけ姫』のアシタカを連想させる言葉遣いと立ち振る舞いの少年・牧眞人。
性格は陰湿で歪みが生じている静かな狂気を持った少年。
ジブリ作品でこの手の男の子が主人公になるのは珍しい🤔

演出・表現はまさに"ジブリ"。
夏子が寝ている眞人に向ける視線の冷たさ。
眞人の持つ「他人のような振る舞い」。
時代背景は『火垂るの墓』『風立ちぬ』
庭は『となりのトトロ』
魚は『崖の上のポニョ』
他にも『ハウルの動く城』『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』などのセルフオマージュが見受けられる。
特に屋敷に住んでいるお婆ちゃんたちはジブリ総出。

音楽を担当するのは『風の谷のナウシカ』以降長編作品を担当している久石譲。
今回はたまたまDolby Atmosを利用することになったのだけど
映像だけでなく音に
目だけではなく耳に
作品に呑み込まれて良い体験だった。
ただ、久石譲にしては心に残る音が皆無だったのが残念😔

そして肝心のストーリーは…
とても人に勧められるものでは無い。とだけ断言できる。
一体観客に何を魅せたい?残したい?メッセージは?テーマは?
と疑問が出てくる人がいるのも当然の内容だった。

内容が不親切以前にストーリーにまとまりがない。
おまけにテンポも悪い。
そもそも完全ファンタジーではなく現実×ファンタジーを両方描くのは難易度が高い上に、
伝えたいメッセージが複数同居している状態で話が展開されていくので、
結局何を伝えたかったのかが最終的にぼやけてしまっている。

観客の中には"違和感"を感じた人も多いだろう。
戦後日本と異世界ファンタジーだから?
夏子と主人公の心の葛藤、成長が軽視されているから?

それもそのはず。
本作は宮崎駿が「今までのジブリ作品」というレンズを通して観客に語り掛ける内容なのだから。

大叔父様が宮崎駿本人
13個の積み木(積み石)は宮崎駿のジブリ作品
本作にセルフオマージュが多いのも当然のこと。
13個の作品で形成されているのが本作とすれば
13個のジブリ作品のメッセージが同居しているのだから読み取りづらい。

恐らく本作の主題は
終盤に描かれていた大叔父様が眞人に後を継がせたい。積み木を積んで欲しい。ということ。
要するに宮崎駿が"眞人"という視聴者に"平和の創造"を託しながら次の世代にバトンタッチをしたいというメッセージ。

しかし眞人は大叔父様の積み石を"墓石"と言っている。
何故"墓石"という表現をしたのか映画館を出るまで意味がわからなかった。
どんなメッセージを込めても
どんな平和を願って作品を作っても
悪意・欲が必ず混じっているということだと思う。

そうしたら世代交代を「裏切り」と言ったインコ大王はプロデューサーである鈴木敏夫のことだろうか?
それともスポンサーのことだろうか?
大叔父様がいる異世界に住んでいるあたり鈴木敏夫のことっぽい。

そして現実世界に戻った眞人。
彼のポケットには1つの積み石が…。
将来彼がその石をどうするのかは一切言及されていない。
そう。
この映画のタイトルは「君たちはどう生きるか」だから。


そんな本作、ジブリの大ファンや考察好きの人間にはおススメできる。
けど、話題になっているから見に行こうとしている勢にはあまりおススメできないのが正直なところ。
初期宮崎作品のような娯楽性・想像性あふれ、観客を楽しませようという気持ちは本作品からは感じられないも事実。

今までの集大成で後世へのメッセージが強い本作、もしかしたら本当に宮崎駿の遺作になるかもしれない。

以下余談。
パンフレットの後日販売までの秘匿徹底はどうなのだろう。
何か重大なことが記載されているのか、それともパンプレットを配るまで各々考えて欲しい。ということなのか。

追記:他のレビューを見てもだいたい行き着く考察は似ている模様
2024/01/28追記:2023年12月半ばにNHKで放送された『プロフェッショナル仕事の流儀』で本作は宮崎駿から高畑勲への亡霊に向けたメッセージ作品という内容だったらしいけど、後にスタジオジブリの元スタッフが"嘘しかない番組"と痛烈に批判していたので、番組を鵜呑みにしないように。
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information:Wiki参考
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