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君たちはどう生きるかのRYOBEERのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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随所に見える所謂"らしさ"は、セルフオマージュというよりも、「自身の内にあるものたちを描けば、やはりこうだった」というような、宮崎駿のインゴットを見たような気がした。


小学生の頃、家族と『もののけ姫』を劇場へ観に行ったのを今でも憶えている。
当時、映画は完全入替制が導入されて間も無い頃で、ネット予約などという便利な制度はもちろん無く、席指定も無い。
劇場へ行ってチケットを買い、会場前に並び、入場した順に好きな席へ座るというものだった。
少なくとも地元では。

"宮崎駿の引退作か?"と、それがあたかもプロモーションのような効果を生み話題になったこともあり、当日売り場にはお祭りのような長蛇の列。
後にも先にも劇場の前にあんなに人が並んでいるのを見た事はない。

まずチケットを買うのにも1時間は並ばなければいけない。
売り切れてしまうと一回分の上映を逃してしまう事になる。
買えたとしても、次はいい席を取る為に違う列で待機しないといけない。

実に3時間近く待ち続けたが、スクリーンに映し出された物語の前では、そんな徒労感も暑さも全て何処かへ飛んでいってしまった。

作品を見る度に今も反芻する思い出。
こんな気持ちにさせてくれるのは宮崎駿だけだとしみじみ思う。

もうその体験が出来なくなるかもしれないと思うと。
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