瓶詰め

君たちはどう生きるかの瓶詰めのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

万人にはオススメできないけど、個人的に心のやわらかい部分にぶっすり刺さってしばらく抜けそうにない。ハマる人にはハマるので一旦見てみればいいんじゃないかな。これはどんな作品にも言えることだけどね!

抽象的なテーマの作品について考えを深めたいとき、考察系漁ったりすることもあるけど、これはそういうのじゃなかった。自分の今あるキャパシティで理解できる程度でも非常に満足した。考えるのはそれくらいで十分。あとはどう感じるかじゃないかしら?と個人的には思った。

第一印象は、クリエイターの頭の中を覗き見る映画だ!
まだかんぺきな形になっていないもの、アイデア帳のラフとか、ネタ帳の切れはしを集めた大きな魚影のように見えた。
現実と異世界の交錯、伝奇ものっぽい構成とか、ところどころあるセルフオマージュがそう見せたのかな?
描きたいことを描きました!という印象。これは好き嫌いがわかれそう。わたしは大好き!
クリエイターとは程遠いし、彼らにずうっと憧れがあった人間からすると、秘密の頭の中見せてもらえた!やった!って感じ。

好きポイントといえば、作中、濃密な死の香りがずっと漂う。これは単純におかーさんが冒頭で火に包まれて死ぬからではない。なんとなくだけど、生きていくうえで自分の死が近づいている感覚を作り手と共有した気がする。生に執着してみせるのって、結局は死を意識しているからでしょ?最後は崩れ落ちるのだけれど、積み上げていく必要があるんだよっていうことでこのタイトル回収するのかな。たしか同タイトルの書籍が原作なのではなくて、作中にその本が出てくるのみなんだよね。でも一貫してそのテーマなんだろうなっていうのは感じた。書籍は未読なのでその辺りは有識者にお任せします。

時代背景について、なにもとくべつ二次大戦中じゃなくてもよいのでは、という意見を見てそういう考えもあるのかと思った。宮崎駿の半自伝作品という面でしか捉えてなかったもん。彼の中に、戦争体験というのは非常に大きなインパクトを残した。戦後、平和に暮らす世代のわたしたちはそんな強烈なインパクトのある体験はしていない人が大半だと思うけど、中には病気や怪我、仕事、お金、人間関係その他もろもろで大変な経験がある人もいると思うんだ。その体験を各々で当てはめてみるとなんかわかる気がするんだよね。追体験のリアリティが増す。おかげでボロ泣きでした。
たしかにキャラクターで考えると大戦中じゃなくても良さげ。

マニアック向けな印象がある一方で、子どもたちにも見てほしいなぁという気持ちがある。話を重きを置くとたぶん意味わかんなくて退屈に感じる子が多いとは思うけど、何人かにはその後の人生に大きな影響を及ぼすと思う。いい意味で。小さい頃って感情揺さぶられやすいから、うまく作用してほしいなぁという思惑がある。

いままでじぶんではジブリっ子と思っていなかったものの、多くのセルフオマージュ、物語の展開の仕方、なによりその画で「ああ、わたしってジブリで育ったんだ」って思えてすごくよかった。

ファーストインプレッションで楽しむ映画という面もあるので、何回も通うタイプじゃないかも。考察が好きな人は通うんだろうけどね。もう一回くらいは見て答え合わせしたい箇所もあるけど、何度も劇場に足を運ぶような中毒的なものではなかったかな。なお、感情はしばらく揺さぶられ続けるでしょう。
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