まめだぬき

君たちはどう生きるかのまめだぬきのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0
点数をつけるのが難しい…感想も難しい…観てよかったけれど、なんとも言い難い映画…

相変わらず夢のような美しい景色や世界。色んなジブリをなぞってるのかと思わせる懐かしい景色。こういう絵がつくりたいんだな、というのが満載。

でもずっと不穏。最初からずっと不気味。気持ち悪い。
ベックリンの『死の島』にそっくりだし、キリコ(『時間の謎』とか)やマグリット(浮かぶ石は『ピレネーの城』だった!)みたいな私の想像する悪夢のイメージだらけでゾワゾワした。

火事で人混みを走るシーンの描写が印象的だった。気持ち悪くて怖くて不安で、火事の中の景色をあんな風に表現するなんて! 不気味で怖くてよかった。

食べ物を食べてまずいと言うのが、今までのジブリじゃない。そんな不味そうなものを食べてるようすじゃないのに…
もうひとつの世界では嘘みたいにバターとジャムを塗りたくる。でも全然おいしそうじゃない!

暗くて哲学的でスピリチュアルで不思議でつぎはぎな映画。
トレーラーがなかったから先入観なしで観ることができたし、物語がどう進むかまったく予想できなかった体験はよかったな。

映画の世界はキラキラしていても、私たちが生きる現実はそんなことばかりじゃない、と話の中で突きつけられた感じ。
しゃべるインコも外に出たらただの糞だらけのインコに。魔法の世界のことも忘れてしまう。

遺作と思ったけど崩れた塔のように今までのすべて(映画)を精算して、これからまだやるぜ、と言ってる。
自分が観たいもののために再構築したい絵のために作ったのかなぁ。
タイトルを考えるとなんだか置いてけぼりな感じ。