まめだぬき

PERFECT DAYSのまめだぬきのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.6
すごくよくて、でも思うところもありなかなか感想が書けなかった…

平山の日々は一見同じことの繰り返しのようだけれど、違う。人との関わりによって変わったり乱されたりする。
彼の日常が繰り返し映し出されることで初めて私たちは同じ日などないと(改めて)わかる。
平山は一刻一刻を尊いものと感じているから、フィルムカメラに二度とない目の前の美しい木漏れ日を刻む。なんてことない日々が愛おしく、美しく描かれる。

他人から「こんな仕事よく続けられるな」と言われようとも、彼は毎日毎日丁寧にトイレを磨き上げる。車の中にあるきれいに並べられた掃除道具たちを見たら、真摯に向き合い積み重ねてきた彼を思い泣けてしまう…

彼の生活を見ていると、孤独を選んだとしても人は誰かとの関わりによって生かされていると気づく。
姪との些細な会話。行きつけの店での決まったやりとり。知らない誰かとの丸バツゲーム。人と関わるから時に傷ついたり、救わたりする。

私はこの映画の語らず観客に委ねられる余白の部分がすごく好きだ。
平山の服がやけにお洒落で似合っててかっこよかった。伊賀さんのスタイリングはいつも素敵!


最後に。資本主義社会の恩恵を受けている企業が、資本主義によって生まれる貧困や格差のなかにいる人を美談として描くことに違和感が…
それぞれの立場の人がそれぞれの務めを果たしたことでこの映画が出来上がり、それを観客である自分が美しいと感じたのは事実なんだけれど…
現実の私たちの生きる社会はもっと醜くて、孤独や格差を抱える人たちを自業自得だと言ったり、ホームレスが殺される事件が起こったりしている。映画の中でホームレスのおじさんは、誰とも交わらない。彼らを無視し続けるのがこの映画の答えなのだろうか。
そしてこれを見た私たちにできることはなんなのだろう。

感想が長い!