りっく

気球クラブ、その後のりっくのレビュー・感想・評価

気球クラブ、その後(2006年製作の映画)
3.0
“気球”と聞いて、一体何をイメージするだろう。

地上を離れどんどん上昇する姿に、個人の夢や未来を託すのか。
風の吹くままに流されていく姿に、不安定な自我を重ね合わせるのか。
それとも青空にぽつんと浮かぶ姿に、一抹の寂しさを覚えるのか。

本作はそんなイメージから出来上がった作品だと言っても過言ではないだろう。
若者たちの想いが気球、あるいは風船に重ねられて描かれている青春映画だ。
だからこそ、全編でどこか抒情的で寂しげな雰囲気が漂っている。

しかし、“バルーン”から浮かび上がるイメージは、観客の頭の中で想像し得るものの範疇を越えることはない。
そのため、ありきたりで使い古されたイメージをいくら重ねられても、それは寒い演出と捉えられても仕方がないであろう。

劇中における携帯電話の使われ方からも同じようなことが言える。
再会したサークルのメンバーが輪になって、各人のアドレスを消去していく場面などは、あまりにもベタすぎる演出だと感じる。

編集の仕方も決して巧みだとは思わない。
個人に焦点を当てきらずに、むしろ若者全体に焦点を当てようとした分、物語の着地点にブレが生じてしまっている。

青春映画はキレイに収まらなくてもいいと個人的には思っている。
逆に、その方が若者の迷いや彷徨いを表現できる場合もあるからだ。

ただし、それは作り手の迷いとイコールではない。
本作の場合、特に終盤にかけて作り手の演出の粗さが露呈してしまっているように感じる。
りっく

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