きらきら武士

インフィニティ・プールのきらきら武士のレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.3
話題のミア・ゴス、初体験。
なるほど、この演技力。怪しさ。妖しさ。キレッぷり。
『悪魔に眉毛を売り渡した女』(by レインウォッチャーさん)
という評価は伊達ではなかった(笑)
素晴らしい。

ブランドン・クローネンバーグ監督作品もお初。
偉大なる父上と同じような路線に踏み込むあたりは父上と比較されることを百も承知の上でのことには違いないが、残虐シーンがありつつも意外や大人しくて綺麗にまとめるんだなァ、お行儀がいいんだなァ、という印象で終わった。

「この国(島)では犯罪犯したら死刑だから」
「金払ってクローンが死刑受ければオッケーだから」

うん?星新一のショートショートかな?(笑)
雑なSF設定は短編向きでは?

確かに、先が読めない展開で主人公の男が羽化して変態、心の生態を変じていく行く様は見ものではあったが、変態の果てにエドはるみ「お子ちゃまねぇ~おっぱい飲みたいのォ?」ちゅっちゅー、という普通の着地を見せたところで、壮大な失笑の波にのまれた。せっかく犬にまでなったのに。

インフィニティ・プール。
へりが背景の景色とつながって一体となって見えるプールのことらしい。境界が曖昧。プールでそういう所に行ったことはないが、鹿児島県指宿のヘルシーランド露天風呂「たまて箱温泉」の露天風呂がそんなだったのを思い出した。露天風呂の水面がそのまま海の景色につながって見える素晴らしい眺め。開放感。「海と一体化している!!」と思えた。ただの錯視だけど。

それで、あの胸糞悪い金持ちどもが金にあかせてヒャッハーやりたい放題、薬、乱交、殺人、自分(クローン)殺し、その果てに何をどう錯視したのか、インフィニティ・プールっちまったのか、全然腑に落ちなかった。
あと、何というか、リゾート地で羽目を外しまくる主人公含むクソ金持ちどもがサイケでフリーなセックス、そしてドラッグに耽るとか、随分とオールドスタイル。いつまでソレやってんの。父親世代に特別な憧れでもあるのかと勘ぐりたくなるほど。お行儀良すぎるでしょ、殺すべきはまず偉大な父でしょ?なんてね。

最終的にミア・ゴスの怪奇さに全部持って行かれてしまった感が残る。
しかし彼女の作品は遅ればせながらこれから要チェックだな。連続するミア・ゴスの向こうに、消えた眉毛の向こう側に、インフィニティ・プールっちまう何かが見えると信じて。嘘。

#2024 #31
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