きらきら武士

πのきらきら武士のレビュー・感想・評価

π(1997年製作の映画)
4.4
この日は仕事でほぼ一日中Excel作業で、16,000行余りのデータと格闘していた。
ギリギリまでやって職場を飛び出て、開始直前に劇場に滑り込み。ふう。
4Kリマスター上映。初見。

数字やら関数でふやけた頭に、ざらついてスタイリッシュなモノクロ映像、ダウナーなエレクトロニカがギューーンと沁みる。非人間的でいいぞっっ。そして何よりも数字に取り憑かれて病み病み闇堕ちしていく男。良いッッ 実に良いッッッ!!!
ほんの少しだけさっきまでの自分の姿に重なる!かっこいい!(酔ってる)

ダーレン・アロノフスキー監督はお初。
と思っていたら昔『レスラー』を観ていたので2回目だった。筋肉むっきむっきで別人のように老いさらばえたミッキー・ロークがなかなかに衝撃的、かつ哀愁だったのを覚えている。

音楽がとにかくツボすぎて。
クリント・マンセルは『レスラー』含めてずっとアロノフスキー監督の音楽担当とか。
今後、気をつけておきたい。

ループ系の音楽はストーリーのループ感も演出している。
「幼い頃、太陽を見た」独り語り。
薬のフタぱかっ、カプセルざざっ、ごっくん。
色々あって、最後は暴れる。うぉぉぉー!がっちゃん、すっちゃん。

そして「幼い頃、太陽を見た」セリフ再び
振り出しに戻る。

ループするごとに男の状態は悪化していく。狂ってる感に「ループ」は非常に有効だな。「繰り言」という言葉もある。

現実と妄想が混濁し、こちらの心までジワジワ病んでくるようだ。
ざらついたモノクロ画像が不穏。コントラスト激強で白飛び、黒潰れまくりで境界が判然としない。アップ映像、高速に切り替わるカット。不安定な手持ちショット。
男の精神が崩れていく様を表現している。

もっとも、男が実際の所、数学的に正しいことを言ってるのかどうかについては数学センスが全く無い私ですら「これ、トンデモ論じゃね?」と思った。馥郁たる陰謀論、オカルトのかほり。サブカルものとして映画で見る分には好物だ。

塚本晋也監督の『鉄男』の影響も感じた。
配線だらけ、やたらと大掛かりでメカメカしい昔の自作コンピューター。
蟻を組み合わせるの、上手い。
あいつら機械的なんだよなー。
でも、あのネバネバはよく意味がわからなかった。蟻のせいじゃないと思う。

音楽の話に戻ると、オウテカ、オービタル、マッシブアタックなどエレクトロニカの有名どころのダークかつダウナーな曲が効果的に使われていて、興奮した。酔いしれた。
後でサントラ音源をネットで探索。サントラCDの方は、曲タイトルとアーティストの記述が中途半端でアーティスト音源を探すのに時間がかかった。結果的に普通にYouTubeに落ちてたが。
好きな人はめっちゃ好きなヤツ。最後に、リンクとサントラの曲目リストを掲載しておこう。

いやー、最高。映画館で観れて良かった。
ちなみにダーレン・アロノフスキー監督はメタリカとルー・リードの共作アルバム『Lulu』からのクリップ、『the view」のMusic Videoも制作していた。なるほど、今観るとそのまま『Π』の延長上にあるMVだった。


https://www.youtube.com/watch?v=k02KIOUU8Hw&list=PLD141E36B4DAC5F13

曲リスト(英語)

1. πr²
2. P.E.T.R.O.L. / Orbital
3. Kalpol Introl / Autechre
4. Bucephalus Bouncing Ball / Aphex Twin
5. Watching Windows / Roni Size & Reprazent
6. Angel / Massive Attack
7. We Got The Gun / Clint Mansell
8. No Mans Land / David Holmes
9. Anthem /
10. Drippy / Banco de Gaia(Toby Marks)
11. Third from the Sun / Brian Emrich
12. A Low Frequency Inversion Field / Spacetime Continuum
13. 2πr / Clint Mansell

曲リスト(カタカナ)
1. πr2 / クリント・マンセル
2. P.E.T.R.O.L./ オービタル
3. カルポル・イントロ / オウテカ
4. ブケファロス・バウンシング・ボール / エイフェックス・ツイン
5. ウォッチング・ウィンドウズ / エド・ラッシュ・アンド・オプティカル・ミックス (ロニ・サイズ)
6. エンジェル / マッシヴ・アタック
7. ウィ・ガット・ザ・ガン / クリント・マンセル
8. ノー・マンズ・ランド / デヴィッド・ホルムス
9. アンセム / ガス・ガス
10. ドリッピィ / バンコ・デ・ガイア
11. サード・フロム・ザ・サン / サイロノット
12. ア・ロウ・フレクエンシー・インヴァージョン・フィールド / スペースタイム・コンティニウム
13. 2πr / クリント・マンセル


#2024 #25
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