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唯一、ゲオルギアのBaadのレビュー・感想・評価

唯一、ゲオルギア(1994年製作の映画)
3.5
1994年、ソ連からの独立後、内戦が続いた時代にまとめられたドキュメンタリー。3本の映画からなり、1ー20世紀初頭までの歴史と文化、2ーロシアからの独立と共和国成立、ソ連への編入。3ー独立から内戦まで、という構成。

間に二度の休憩が入る四時間のプログラムで、これでほぼ20世紀までのグルジアについての知識を得ることができる。20世紀の作品なので慣例によりジョージアではなくグルジア表記で通します。
第3部でシュワルナゼ支持が明白な立場として打ち出されるが、それを除いても、若干の偏りは感じるし、イオセリアーニの他のフィクションの映画ほどには楽しくないかな。

とはいえ、あまり知らない国のことなので貴重な一本。

グルジアの民族構成についての字幕でクルド人と最初に出てくるのはグルジア人の誤りか?あるいは単に少数民族を列記しているだけなのか?

第一部でグルジアの古くからの伝統、産業、文化について語られる。住民の大半はグルジア正教を信じるキリスト教徒で、周囲からの難民も受け入れ、穏やかに暮らしていた。ワイン、パン、中庭がわに設けられたバルコニーによる交流、個人主義、音楽、美術などなど。教会の建築様式は時代ごとに変わってきている。貴族は軍人が多いので、軍人としてロシアに食い込んだ。

第二部のソ連時代では、ソ連が各共和国が連邦を離れないようにする方策として農業で商品作物しか栽培できないようにしたが、計画経済の実現のため品質が後回しにされ、国内ではだれも飲まないお茶などが栽培され、生活必需品の小麦などは輸入せざるを得なくなったこと、教育熱心な国民性で大卒者の割合が高いこと、(『落葉』を見た時、妙に高学歴を要する専門職の割合が高い街だな、と感じたのですが、やはりそうかという感じ。)ソ連時代の70〜80年代に芸術が栄えたこと、など。

計画経済のデメリットだけでなく、社会主義圏でもかつての西側諸国が行った植民地経営のようないやらしい政策が行われてことを知りました。その結果としてのウクライナ戦争下での世界食糧危機なのね。

2部から登場して、のちにグルジアのトップになったソ連のシュワルナゼ元外相のゴルバチョフへの言及が面白かった。ペレストロイカがソ連の体制崩壊をもたらすとは全く思っていなかったらしい。そのシュワルナゼもソ連の国家体制自体が腐敗を生むものだ、という認識はあっても、ではどうしたら経済が上向くか、までには力がおよばなかったらしいのですが・・・

内戦での虐殺の映像は最近のシリア戦争のものと似ている・・・

1994年にはロシアの影響力の排除とジョージアの独立の維持が課題で、ラストはカオスでした。

ほんの数分見逃した部分があるのですが、グルジア出身のアルメニア人パラジャーノフの映画が出てこなかったのはなぜなのかがちょっと気になった。
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