こなつ

丘の上の本屋さんのこなつのレビュー・感想・評価

丘の上の本屋さん(2021年製作の映画)
4.0
イタリアの最も美しい村のひとつチヴィテッラ・デル・トロントが舞台。イタリアで唯一陥落しなかった広大な城壁がある。息をのむ絶景、狭い石だんの道、歴史を感じる石造りの家々、この風光明媚な丘陵地帯を見下ろす丘の上に小さな古書店がある。

店主のリベロ(レモ・ジローネ)とアフリカ系移民の少年エシエンが、本を通し、年齢や国籍の違いを超えて育んでいく交流を描いたハートウォーミングストーリー。

ある日、店先で漫画本を眺めているエシエンに気付いたリベロは、貸してあげるから必ず返しに来るようにと言う。そして読んだ本の感想をエシエンに聞き、リベロが物語の内容を読み解いていく。好奇心旺盛なエシエンは、リベロの話に熱心に耳を傾け、次から次へと様々なジャンルの本が貸し出されて行く。

コミックから始まり、児童文学、中編小説、長編大作や専門書まで、私達が子供の頃一度は読んだことのある懐かしい本の名前に胸が躍る。

エシエンが読書によってまだ見ぬ世界を知り成長していく姿は何とも微笑ましく、観ているものを温かな気持ちにさせてくれる。

古本屋の隣のカフェの店員ニコラが、年老いたリベロを何かと気遣い、また集まってくる個性溢れる人々とリベロとの何気ない温かな交流が胸に沁みる。

古本屋の店主の名前「リベロ」は、イタリア語で自由という意味。原題は「幸せになる権利」
移民である少年エシエンに対し、自由であること、誰もが幸せになる権利を持つこと、最後にエシエンに贈った本からもその強いメッセージを感じた。

イタリアの小さな町の美しい景色に癒され、心を豊かにしてくれる作品だった。
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