おけい

ひとくず 新ディレクターズカットのおけいのレビュー・感想・評価

3.7
胸がえぐられるような思い。こういう題材の映画を見ると、虐待なんて消えて無くなればいいといつも思う。

しかし、本作で描かれているように負の連鎖は止められない場合が多い。虐待されて育ったり、愛されずに育った子にはあまりにも酷な現実だが、親がクズだと、たいていはクズになってしまう。

胸にはアイロンの火傷、手にはタバコを押し付けられた跡、電気も止められ、食べ物もない汚いアパートに6歳の少女、鞠が閉じ込められている。

学校の先生も、児童福祉の調査員も親に拒否されれば何もできない…

そんな鞠を救ったのは、偶然アパートに空き巣に入ったクズ(上西雄大)だった。

脚本、監督、主演を務めた上西雄大…何者⁈って思わずググる程この主人公、金田まさおというキャラクターは強烈だった。うるせーブス!早くしろや!何ジロジロ見てんだよ!…そんな汚い言葉が飛び交う普通ならお近づきになりたくないチンピラタイプ。ま〜口が悪過ぎて笑うレベル。それゆえ、時々見せる素朴な表情がたまらない。

空き巣に入ったアパートで隠れてた少女を見た瞬間、虐待を受けてると一瞬で理解するまさお。それから度々、自分が幼少期虐待を受けてきたシーンとリンクする。 

鞠の母親が男に依存しないと、生きていけないタイプというのも、まさおの母親と一緒。

まさおは、鞠を守りたい一心で強引に鞠の母親を矯正していくのだが、このやり方、ストレートで嫌いじゃない。あんな母親に生ぬるいこと言ったって分かるわけないしな。

厳しい現実かもしれないが、ラストはあれで終われば良かったんだよ。その後の展開は個々の想像に任せればね。エンドロールの後の出所後のストーリーは、個人的に要らなかったかな…と思います。

所々、素敵なシーンが散りばめられているだけにラストはちょっと残念。
おけい

おけい