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岸辺露伴 ルーヴルへ行くのシネラーのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
4.0
荒木飛呂彦原作の
『ジョジョの奇妙な冒険』から生まれた
スピンオフ『岸辺露伴は動かない』
を実写映画化した本作を公開初日に鑑賞。
ジョジョ本編を追えなくなっても
本シリーズは原作・小説・実写ドラマと
追い続けている身だが、
映画化に相応しい舞台設定と
ドラマ版から一歩踏み出したような
見せ方が見事だった。

人を本にして人物の生い立ちを知り、
そこに書き込む事で相手を操作できる
ヘブンズ・ドアーの能力を持つ
人気漫画家・岸辺露伴が、
自身の過去に関わりがある奈々瀬という
女性と"黒い絵"を巡り、
ルーヴル美術館へと
赴いていく内容となっているが、
美しい絵画美術と共に魅力的な
怪奇談を描いていると思った。
物語としては、
露伴の過去回想を含めた事件の発端、
ルーヴル美術館での怪奇、
黒い絵と奈々瀬の真実、
といった具合に三部構成となっており、
それぞれのパートに特色がある事で
違った面白味が感じられて良かった。
その上で露伴と黒い絵の関わりが
深掘りする形で原作から改変されており、
物語の始まりが結末に
収束していくのも見事だった。
日本を舞台にした場面では
日本らしい陰影的な美しさが目立ち、
目玉となるルーヴルでの場面は
その美術品を背景や手前に配置した
カメラアングルがどこを切り取っても
絵画的で素晴らしかった。
そんな中での怪奇的な黒い絵の描写は、
ドラマ版以上にホラー的で
ゾクッとするものがあった。
相変わらず高橋一生の演じる
癖のある性格の岸辺露伴は見事だったが、
物語の重要人物である奈々瀬を演じた
木村文乃の怪しげな雰囲気も良かった。
原作やドラマ版を知らなくても
理解できる内容にもなっており、
その点でも一本の映画として良いと思った。

僅かな不満点を言うと、
露伴のナレーションが挿入される場面が
幾つかあるのだが、
それが良くも悪くも漫画的な技法にも
感じられて作風としては不要に思った。
又、個人的には気にならなかったが、
物語が丁寧でゆっくりなだけに、
人によってはそこで好き嫌いが
分かれるように感じられた。

劇中で蜘蛛の描写多々あるのだが、
奇しくも映画館へ赴く際に自家用車の
窓に蜘蛛がいたのも運命的に思った。
新しいパンツを履いたばかりの
正月元旦の朝のような爽やかさで、
小旅行した気分にもなれる
漫画実写の素晴らしい
成功作品じゃあないだろうか。
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