掛谷拓也

ザ・キラーの掛谷拓也のレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.8
フィンチャー作品にしては展開が地味と感じたが、そのぶん文学みがあるというか上質な連作短編小説を読んだような気になった。場所ごとに章立てされてるし。

殺し屋の復讐劇ではあるが、乾いた内省が全体に通底している。またアクション場面は絵が暗く、アクションを前に出さない演出と思った。派手さはないが多くの美点を備えた良作。

パリの緊迫した殺しのシーンが良い。以降繰り返されるモノローグを聞いて、ずっと聞いていたい気になる。セリフの英語が難しくないこともあって、特にこの場面では字幕を邪魔に感じた。邪魔とまで思うことは珍しい。

復讐される女の殺し屋ティルダ・スウィントンがスタイリッシュでなんとも良かった。

殺し屋がニューヨーク郊外に住むのは珍しいと語られていた彼女のハドソン川畔の自宅を突き止め、ホテルのレストランで彼女に対面するシーン、店を出て死を覚悟した彼女を殺す場面が印象的。

グランドセントラル駅からメトロノース鉄道に乗るのでハドソン川沿いの郊外の街にこんな古い高級ホテルがあるのかと驚いたが、ロケ地はシカゴ郊外のセントチャールズというところだそうだ。ホテルベイカーにザ・ウォータフロントというレストランが実際にある。

FitBitで心拍数を管理し、Amazonでピッキング道具を買い、GoogleMapで道を探す。パリの暗殺場所はWeWorkの跡地というのが今っぽい。