掛谷拓也

パッチ・アダムス トゥルー・ストーリーの掛谷拓也のレビュー・感想・評価

3.7
笑いや楽しさが患者の生活の質を上げるという信念と、患者を症例や課題として扱うのではなく人として扱うというヒューマニズムに基づく医療を実践したアダムズ医師の自伝的映画。彼の考えや実践の話はよく読んでいたのでストーリーに目新しさはなかった。ホスピタルクラウン運動などが彼の実践から生まれ、日本にもホスピタルクラウン協会がある。あるいは吉本興業の政治化などのバックグラウンドの一つとも考えられるだろうか。60年代アメリカの話だが、当時の医学会の非人間性は理解できる。インフォームドコンセントの概念などもなかった時代だ。ロビン・ウィリアムズのヒューマンコメディの資質はまさにこの脚本にはうってつけだろう。しかしロビン・ウィリアムズ自身が鬱病で自殺したというニュースを知っているだけに、最後まで彼の活動の危うさにハラハラして話にはのめり込めなかった。劇中にでてくるカリンのような彼女はアダムス医師にいたようだが、その後の事件は実話ではない。アダムズ医師は現在も存命。思い過ごしだろうが劇中のカリンの事件が、ロビン・ウィリアムズの自殺に影を落としているような気がしてならない。小説家ウィリアム・スタイロンの鬱病闘病記「見える暗闇」を思い出した。