いずむ

ザ・キラーのいずむのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
4.0
『マインドハンター』以来のデヴィッド・フィンチャー作品の鑑賞。オープニングから『ドラゴン・タトゥーの女』ほどカッコつけてはいないが、目覚まし時計のような正確さでクレジットを飾る。それからファスベンダーがほぼファスベンダーしているだけの殺し屋ザ・キラーの様子をイン/アウトの繰り返しで刻んでいく。これまで統計に影響を与えないくらいの些細なバグとして生きてきたピークを過ぎた凄腕の殺し屋が、これからは統計の中に取り込まれたプログラムとして生きようとするまでの物語。遠くから見たらティルダ・スウィントンみたいな女だなと思ってたら綿棒みたいな女はやはりティルダ・スウィントン。綿棒や傘など、人間が必要としているもので完成されたシンプルさを持つものがあるけれど、「ある殺し屋の日常」を描くとすれば、ライフルスコープの照準がピタッと真ん中にきて心拍数がグッと上がるときのあの瞬間のように完成された緊張感がこの映画にもあったように思う。深夜に配信で見るに丁度良い逸品。「007みたい」がナイスお世辞。
いずむ

いずむ