YasujiOshiba

ザ・キラーのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
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ネトフリ。24-48。

マイケル・ファスベンダーは『プロメテウス』(2012)や『エイリアン: コヴェナント』(2017)のデイビッド&ウォルターを思い出させる。完璧のようで完璧じゃないアンドロイド。あまりにも人間的。この「殺し屋」もそんな感じ。

人間らしさを引き出すのは女たち。冒頭の美女はモニーク・ガンダートン。このカナダのスタントパフォーマーであり俳優の肢体が揺れることで、殺し屋のミスが誘い出される。気にするな、気にするなといいながら気になるわけよ。それだけの迫力があるのが彼女。

そして、弁護士秘書のドローレスを演じたケリー・オマリー。自分の遺体が処理されることを知っているから、事故に見せかけてほしいと頼むんだよね。子どもたちに生命保険がおりるから。この言葉に、ファスベンダーの気持ちが一瞬揺れたように見えたのは僕だけか。

それからもちろんティルダ・スウィントン。型破りな殺し屋だけど、じつに殺し屋らしい。いや、むしろヴァンパイアか。ファスベンダーとのウイスキーを飲みながらの会話が最高。クマと猟師の話だけど、的を外したら猟師は、食われるか、ソドマイズされるか選ばないとならない。何度も的を外しまくって、おまえもしかするとわざと外しているのか。ティルダが言うと可笑しいけど怖い。そしてもちろん、あの最後の一瞬の殺陣。うん、あれは殺陣だよな。絶品でした。

忘れちゃならないのがドミニカ共和国のマグダラちゃん。ボコられた顔しか見てないのだけど、そこは石を投げられたマグダラのアリアということなのだろうか。イエスは罪あるものは投げるなと言うのだけれど、神なき世界だから石を投げられちまうってことなのか。


ふと思い出したのは、シチリア祭りをやってたころに見た『狼は暗闇の天使』(2013年)。似たような殺し屋の話だったよな。もちろん、ジャン=ピエール・メルヴィルの『サムライ』(1967)が出発点。見たはずなんだけどね。もう忘れちゃった。忙しくなる前に見直さなきゃね。
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