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ナイアド ~その決意は海を越える~のBATIのレビュー・感想・評価

4.4
すごくよかった。これ、監督「フリーソロ」のエリザベス・チャイ・パサリヒィーとジミー・チンだったんですね。あれは良いドキュメンタリ映画だったけど、ここにもその才覚が活きてるのを感じました。これは女の「反抗」の物語。壮年期だからってわけじゃない反抗。REBEL。その気骨に惚れ込んだ女が相乗りして託す。劇中にも"Just like a punk rock."って女性学者が言うシーンもある。

壮年女性のチャレンジだけでなく、ティーンの頃のグルーミング/性的虐待を受けたトラウマの話が出てきたので、実話ベースとはいえテーマが に二重の意味が出てくる。「何故あの時何もしなかったのか」そして「今やめたらまた同じことを思う。」価値があるとされる時代が男性と女性では全く異なっている世界の不均衡な価値観、それへの反骨/気骨を見せるナイアド。それを支えるボニー。そのボニーの献身性には女性としてナイアドに託したものもあったのでは、と読むこともできそうな物語で、シスターフッドであることを描こうとせず、長く生きて世界への諦観飽和感を感じた女二人の人間同士の結束と信頼、信託の物語であり、それだけでなく集結したクルーたちの知識と経験とプラン、何が損なわれても結実しなかったことを表しているところも真摯な描き方。ナイアドの情熱と精神の彷徨いと狂気の狭間をアネット・ベニングが全身で(いや、水泳も水中撮影もすごいだろこれ)表し、守護天使のようなボビーをジョディ・フォスターも全力で応える。この二人の佇まいも演技もすれっからし感がない、引け目も無理な前むきさがない。やっているのは「反抗」。女の反抗の物語に女が応える、そして人々がついていく。何度打ちのめされても。気骨がある人間の話だがヒロイックではなく弱さも表していて、とてもヒューマニティに溢れた傑作だと感じた。夜の水泳のシーンの幻想さと紙一重の危険も良い。使われる60-70年代の曲もナイアドが選んでるという設定があるせいもあって、無理してるところがない。その辺りもセンスがよい。やたらとキメキメでないところとキメるところはキメる。塩梅のとてもよい映画。
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