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パスト ライブス/再会のあのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
5.0
配給 ファントムフィルム
字幕 松浦美奈(松浦さん韓国語までできるのすごい

今年ベスト
A24で公開するよと言ってからずっと楽しみにしていてやっと日本でも公開してくれて期待値もハードルも爆上げで行ったけど本当に観て良かった

この物語のキーとなるのはやっぱりアーサーで、ものすごくアーサーの存在が大きくて
アーサーの中ではノラが寝言で韓国語を話したり、どこか自分の中では絶対に届かない部分みたいなものがあって
でもその分かり合えないことや相手の触れてはいけない(触れようとしても無理な)ところも含めて受け入れていくことが夫婦の在り方のひとつなんだろうなと思う
それもすべて受け入れた上で“I know,I know you.”と確かめるようにノラにつぶやく台詞が沁みた
この映画は極力無駄な言葉を排した脚本だからこそ、ベッドでぽつぽつと語り出すシーンが本当にすごく良い

既婚者にわざわざ会いに来る男ってどうなんだよ、と思うんだけどなんかもうヘソンにとってはそういう問題じゃなくてソウルメイトみたいな感じなのかな〜と思ったが、会った瞬間の表情が全然まだ好きやん!となった
ユ・テオ演技うますぎ
やっぱりものすごく好きだった人って(愛とかもうそういうレベルじゃなくて腹の底から好きみたいなレベルの人は)いつまでたっても自分の中に在り続けると思うのね

ノラがハグして戸惑う様も異文化や住んできた場所の違いをさりげなく、でも明確に表すシーンで台詞も全然なくてものすごく監督のセンスが出ている
(ヘソンとはじめてテレビ電話するときも帰ってきてごはんも食べずに速攻PC開いて、でもちょっと髪は整えて、みたいなの巧い)

ノラはアジア人として欧米での自分のライフスタイルを確立させていて、(はじめの学校で馴染めていなかった描写はおそらく簡単にはいかなかったことを示していると思うが)それは自分で選んだ道、というか自分で努力して切り開いた道なのだから今自分で選んだ生活に納得しているのなら素敵だなとも思う
幼少の別れ道も左のヘソンはまっすぐだが右のノラは階段を登っていく
この辺りもふたりの人生の違いを表していて巧い

アーサーがとにかく良い人だし(バーで話しているとき会話に入れない時の表情がもうね)ラストシーンも含めて本当に言葉、行動、表情のどこを切り取ってもすべて良かった
夫婦にとってパートナーの存在はやはり大きい

ラストの長回し&横移動が本当に素晴らしくて、こういうシーンに出会えるからこそ映画っていいなと思える
ノラもヘソンが自分のことを好きなことはわかっている、でも自分の選択した道にヘソンはいないんだよね

人生でものすごく好きだった人と結婚できるわけではないと思うし、その人とはまた違う人と結婚して良かったかなぁとか、
結婚だけではなくてこれまでの自分の人生のいろいろにおいて選択してきたことが正しかったのかとか迷ったり考えてしまうことがあるすべての人へ、この映画が全部救ってくれるよと教えてあげたい

最後の涙はいろんな感情が混ざっていると思う、もうラストで鼻水ダバダバにバスタオルいるくらい泣いてしまった

みんな、自分の選んだ人生や選択を全部抱きしめて生きていこうな
あ