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ボーはおそれているのあのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

配給 ハピネットファントムスタジオ
(これからA24の日本の配給権は全てここになるそうですね)
字幕 松浦美奈

アリ・アスターの新作!3時間!いや普通に長い 観る前はおかわりしようと思ったがきつい 無理 確認したいところもたくさんあるんだけどな...

おそらくヘレディタリーやミッドサマーしか観たことがない人が観たらぶったまげると思う...余力がある人はアリ・アスターの短編を観てからの方が受け止め方がマイルドになる気がする

初期作の短編のようなようなやりたいことを好き放題やりました!!な映画
しかしこれまでの作品との大きな違いは予算が桁違いにかけられている(と思われる)こと(ミッドサマーで儲かったんだろうなと思いながら観ていた

全編非現実のようにしてある一方で妙にリアルな部分もたくさんあって、特に終盤の母との対話がやたらリアル
どこまでがボーにしか見えていない世界なのかわからない作り方にしてあるのが良かった
アリ・アスターの全作品において両親からの呪縛(特に母親にその色が強い)がひとつのテーマになっていて、過去に家族や恋人といったいどんなことがあったのかと毎回新作を観るたびに心配になってしまう

ボーは基本的に自分で判断して行動していることが少なく、人から言われたことが絶対になってしまっている様子がうかがえる
これはおそらく母親のせいで、世の中には少なからずこういう人がいるのではないかな
母と娘よりも母と息子のつながりの方が何かしら強く恐ろしいものがある(と常々わたしは思っている
この物語のひとつのキーである水が羊水を表しているのだと思うが、ボーが常に母親の支配から逃れられないことを表しているのか
それは監督自身もそうなのだろうか
そして母親は極端に性的なものから息子を遠ざけている
屋根裏という閉鎖的な空間にいた父親(と呼べるのかも謎だが)、あれが最たるものでギャグっぽく作ってあるもののそこに閉じ込めてあったということがわりと恐ろしいことなんだよな...

冒頭のシーンも疑問で、母親が赤ちゃんを落としたのか、と必死に叫んでいる
考えられるのは①母親の妄想②本当に病院側が落とした
後のボーの物語を観るとこれがどちらが事実であってもおかしくない描き方になっているのが恐ろしい
ボーの母親は何かと他人に自分の考えや感情を押し付ける面がある
ボーが自分で何も判断できないのはそういった母親の育て方によるものなのではないか

アリ・アスターの映画の結末は主人公がいつも自己犠牲で終わる
それこそが母親によって作られた内省的な彼の性格を表しているような気がして気の毒だなぁと感じた

ラストの審判のシーンは映画館で観てこそ完成する画作りにしてあり アリ・アスターが常々インタビュー等で観客を巻き込みたいと語るスタイルをまさに表現した形になっておりファンとしては感激してしまった

1点、SNS等でアリ・アスターが母親をプレミア(?)に呼んだという書き込みがいくつか見られたが、いくら調べてもそのソースがわからず、私生活をあまり公にしないアリ・アスターがそんなこと語るかな...と思ってしまった
そしてもしこれが本当の話だったとしても母を呼んだ=母と良好な関係ととらえるのはあまりにも安直ではないかと思う
見せるしか選択肢がないのかもしれないし、見せることで何か母に訴えたいものがあるかもしれない
アリ・アスターの作品において100%意図を汲むことは本人以外には無理だと思うしわかったように考察するのも違う気がするよね...
今回はパーソナルな作品になった気もするが、外界から非現実の狭いコミューンに入るという構造のミッドサマーの方がやはり個人的には好きだな

オオカミの家のふたりによるアニメパートは大変良かったがあの森のシーンはバッサリ全部カットしても良かったかなと思った
あ