僕と誰かの関係が、既存の言葉でしか表現できないって、少なすぎるよな。なんてのは15年ほど前から思ってたことで、年とともに折り合いはつけてきたものの、やはり未だに根強く思うことである。ラストシーンにじんわりとしながら、長年のそういった思いに対しての、ある種の答えをもらった気分になった。
◆◆
好ましいのは、映像的なパンチ力に頼っていなかった(ように見える)こと。ただ誠実に撮っているのである。たしか二度ほど、とても効果的なタイミングでフラッシュをインサートしていて、特筆するのはそれぐらいの。あとはただ、美しく・贔屓なく。そういう意味では、非常に退屈ではある。個人的には、登場人物たちにはカリスマも感じず、それも退屈に拍車をかける。
と思っていたら、物語の中盤、その「特別じゃなさ」も狙いであることが伝わってきて、ああこれは市井の、僕やあなたにも起きていいことなんだなと思えた。僕たちの人生は基本的に誰かにとって退屈だし劇的ではないだろうし。
◆◆
あの人や、あの人や、あの人に、観てほしい映画だなと思った。何を思ったか、ぜひ教えてほしいなと。僕が思ったことを話すことより、誰かがどう思ったかを聞きたくなるような映画だった。