次男

哀れなるものたちの次男のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
(例えば魚眼、4mm多用とか)なんであの撮り方で成立できると思えるんだろう?でも僕はストレスなく楽しく観た。(例えば各国を跨ぐときとか)なんでこんなシーンの跨ぎ方して成立できると思えるんだろう?でも僕はおしゃれななと思った。(例えば脳移植とか)なんでこんなペラペラの嘘で物語を次に進められると思うんだろう?でも僕はすんなりと物語に没入した。こんな奇天烈なはずの映像作品が、こんなにたくさんの人たちに観られて、理解されて、当然のように賛辞されてることが、めちゃくちゃすごい。

観客の理解度を適切に捉えること、って、自己表現の純粋度より大事な時があると思う。観客を信じすぎたら思いは届かないし、観客を舐めすぎたら飽きて見下されてそっぽを向かれる。両思いでなくてはならないと思う。

この映画の素晴らしいところは数あれど、個人的にはそれだったなあ。これだけいろんな表現をやりきってる中で、しかも「監督の好きなようにやりきってる!」と思われてそうな表現の中で、でも結局自己満足的じゃないというか、「全く何もわかりません」という人が、少なそうで。プロットも映像表現も。すごいこと。

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「あの映画とかあの映画とかっぽいな〜」とか呑気に測ろうとしてた冒頭だったけど、けっこう早めにそれはやめて、むしろ「この映画っぽいって、後続の映画が言われる系のやつだ」と思った。本当にすごいね!!めちゃくちゃ観たことない!!観たことなかったよ。

ならば物語は難しいかなと身構えるも、昔話ぐらいわかりやすく、するすると、入れてくれた。エマストーンって本当にすごいんだな!継ぎ目がぜんぜんわからない。

ロンドン、リスボン、船、アレキサンドラ?、パリ、ロンドン、か。観終わった今も、プロットをするすると思い出せる!
好きだったのは船。あ、リスボンも好きだったな。ダンスのところとか!

つくづく、自分は数限りない矛盾と折り合いつけて今ここでこう思考してるんだなと思ったよ。無垢に立ち向かう彼女を、ベーベちゃんとは言えなかったなあ。


で、個人的には、個人的にはね、ラストのヤギは好きじゃない。短絡的な皮肉に受け取ってしまった。ロンドンに帰ってきたあとの、林道の会話でチャンチャンでよかった。と昨日は思ってた。でもそれは、「学んだベラの最終地点は、今の僕と同じでいてほしい」という小さすぎるマインドなのかもしれない、と思った。今書きながらふとそう思った。

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映画とかドラマはたくさんの人と作るし、それが醍醐味でそれがすごく難しいことだと思ってる。実現させることだけでも、本当は褒めてほしいんだ。それがこんな複雑かつ至高な形で実現してること、どう賛辞していいかわかんないな。

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でもセックス多すぎて疲れたよ。
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