あっさりゆで卵

ミツバチと私のあっさりゆで卵のレビュー・感想・評価

ミツバチと私(2023年製作の映画)
4.0
すごい良かった。
かなり能動的に観ないといけない映画で、ドキュメンタリー的な印象も受けるほど、いい意味で淡々と描かれる。

「名前」の映画という印象。
名前が持つものは個の識別だけじゃなくて、自己の確立でもあるんだと再認識させられた。
アイトールという名では自分の名前を呼ばれたがらず、本当に呼ばれたい名前、つまり自分を探すという物語

ジェンダーに悩む当人とその周りの様々な心情が同時に描かれるのも良かった。
子どもの目線でも、大人の目線でも、親の目線でも観ることができる。
物語全体を通して、複雑な大人の心情と世界、子どものフラットな生き方の対比にもなっているよう。
特にココにとって良かったことは、叔母がいることだった。

終盤のみながココの名前を呼ぶシーンは、周囲の大人の無自覚な無神経さはある種暴力的で、そうじゃねえんだよ!と思いながら観ていた。
ただその途中に、ある人物が「ルシア」と呼びかけたことで、母がついにその名を叫ぶところはグッと来るものがあった。

ルシア自身がミツバチの巣箱を叩き、自らの名前を呼ぶシーンには、やっと見つけた「自分」に対する祝福の様にも思えた。