年末最後にみた北野武最新作。
いやーめちゃくちゃ面白かった。
冒頭から、首のない死体から始まり、「首」を巡って荒木村重の謀反から本能寺の変、そして山崎の合戦までが描かれる。
大河で描かれるようなカッコいい武将は1人もおらず、全員ダサい。
人の心などない第六天魔王のような信長も親バカで、真面目で冷静な光秀も信長と蘭丸の姿をさせた下人を斬ることで憂さを晴らすなど。
ダサいというのか、英雄然とした人間は1人もいないところからも、冷めた目線で描かれる戦国時代劇の面白さがあった。
男色文化もしっかりと描かれるが、別にそこに笑いを見出すわけではなく、死と隣り合わせの時代に、主従関係や愛を超えたものが存在するのは非常に腑に落ちる。
一貫して、首に取り憑かれた武将たちの話で描かれるラストには、誰も報われることはなく、武士の本懐というのか、物語全体にある死の軽さがより強調される終わり方だった。
1番笑ったところは、清水宗治の切腹の場面。語り継がれる武士の美しい散り際のはずなのだが、「長ぇーよ！！！」のツッコミで一気にコントに。
この映画自体、時代劇コントと言っても過言ではないほど、首を挙げることに翻弄される武士たちを冷酷に笑い飛ばしながら、文献からは見えてこない戦国時代のリアルを緻密に描こうとしている、ように思う。
