烏丸メヰ

サウンド・オブ・サイレンスの烏丸メヰのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

ラジオを修理した後異変に見舞われた父の元へ駆けつける、歌手志望の娘エマ。
仲睦まじい両親のはずが、医者の見立てでは、母の腕には防御創があるというーー

心霊系イタリアホラー。
サバイバル要素と組み合わされる事の多い“音を出してはいけない”という緊張感を、心霊的かつ視覚的恐怖に絡めた映像表現は面白い。
現れる時は後ろ向き→近づいてくる→襲いかかる時は死角まわりor首絞め
という幽霊の動きのテンプレにやや首を傾げたが、後ろ向きで現れるというのは結構怖いな……。
室内にも関わらず不自然な光源の少なさも、この幽霊の一連の演出が「明るかったら怖さより滑稽な面白さが勝ってしまう」からか。

導入~中盤までの怪奇現象続発シーンは、防音室、洗濯機等も手伝って不穏なゾクゾク感がありお気に入り。
ただし、後半、製作サイドが込めたかったのだろうテーマ的な暗喩を主軸に据えた展開と解決に向かう事で、前半の恐怖の質感がかなり薄れてしまう感じはある。

パニック障害か何かの心の傷で声を出せない主人公と、抑圧され顔色を伺って静かにする事を強いられ横暴に声を出せぬまま死んだ幽霊の母子を重ね合わせ
「恐れず声を上げる事(虐待やDVに沈黙せず、勇気を出して声を上げて抗い立ち向かう事)」
の暗喩としてあのラストを描きたかったのかな、とは思う。エマの父がDVを疑われる一連の流れなどを見ても無関係ではなさそうだし。
勿論ここは伝わったし、こういうメッセージ性のホラーがあっても良いとは思うが、不気味に不気味に攻めてきた序盤から急に社会問題メタの勇気啓蒙に走られたのは正直困惑した。
しかもハッピーエンドの後、仕切り直してそこそこの長さでまた恐怖描写の塊を見せてくるので、感情の切り替えのやり場がなく蛇足感も(このエンディング後のシーンは前半の怖さを更に濃くしていたので好きは好き)。
烏丸メヰ

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