基本的には、生きづらい人々が手を取り合うことで生まれるペイフォワードのような善意の輪と、配慮と無遠慮がミックスした何とも言えない関係性でも少しだけ息しやすくなれるってことを描いている。
けれど、私には後悔が衛星のように巡っている作品のように感じられた。
映像にも言葉にもなってはいないが、過去に「もしあの時、手を差し伸べられていれば違ったのではないか」という後悔の念が取り巻いている。
あくまで主役は、PMSとパニック障害に苦しむ2人の若き男女の話だが、その2人の勤務先である栗田金属の人々を含め、社会に希望を与える場や関係を作る人々の根底には、割り切れない哀しみがある。
多くの人がレビューするようにおとぎ話的とも思える優しい世界なのだけれど、その中で息をしている人々の形なき傷痕とそれをそっと埋めるように、誰かと手を貸し合うのは、生々しい優しさとも言えるもので、その点が最も私の感情を震わせた。
