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夜明けのすべてのkossのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.4
フロントガラスの雨滴、雨のバス停のベンチに倒れる女性。オープニングの触覚度が高く、夜景、電車、街並、隧道などの風景が16ミリ撮影で効果を発揮するが、物語が進行すると深度がない。胸に来ない。

病気をもつ者、心に傷をもつ者、欠損者、社会不適合といったテーマの類型。パニック障害とPMSの丁寧な説明には傾聴するが、元上司も社長も肉親が自殺した過去をもつように、主人公の周りがすべて善人ばかりで、類型がさらに強化される。悪人がいないのは、どうしても作為性を感じてしまう。

ドキュメンタリーを制作する中学生二人、男子はハーフといったエピソードの導入も意図性が強い。松村北斗の発話表現は上手いが、上白石萌音は過剰で劇画的である。

男女に友情は成立するかという古色蒼然な問いの中でも、恋人のアパートに来る同僚の女に猜疑を持たず感謝するのは不自然だし、何より、冒頭に警察に引き取りに来た母親が、突然、介護状態になった理由がなぜ省略されているのだろう。母親の介護のために転職するのだから必要な項目だった。原作からの変更を指摘される脚本は少し無理があったのではないか。三宅唱監督は前作が傑作だっただけに少し残念だった。
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