あおは

夜明けのすべてのあおはのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞したのが2週間以上前のため、感想がうろ覚えになってしまっている。

月経前症候群PMSを抱える藤沢さんとパニック障害を持つ山添くん。優しいとは言えない他者や社会との関わりが難しい2人が、友達でも恋人でもなく、自身と闘う同志のような存在として助け合うという愛しいお話。

松村北斗演じる山添くんは、上白石萌音演じる藤沢さんの厚意を断ったり、PMSはパニック障害とは大違いだと藤沢さんの歩み寄りを拒否したりなど他者に心を開いていない感じがリアルで、2人がどのように距離を縮めていくのか楽しみに観た。
2人が接近するのは、山添くんの髪の毛を藤沢さんが切るところから。
このシーンは笑わせてもらったし、山添くんが心を開いた感じが温かく感じた。
もうちょっとチャンスをちょうだいと言って髪の毛をポケットに隠そうとするのもおもしろかったし、きっと山添くんは心配され過ぎるのも嫌だったんだろうなと思った。
だから変に気を遣われたりするよりも、藤沢さんの良い意味での適当さに心を開けたんだろうなと感じた。

PMSもパニック障害も自分の体のことなのに自分ではどうにもならない。
昔、船乗りが星を頼りに航海していたように、遠く離れたところにあるのに見上げれば近くにあり導いてくれる星。
2人は自分で自分のことはどうにもならなくても、お互いに助け合うことはできることに気づく。星のように。
「多分、今PMSの症状出てると思うので1人で怒っててもらっていいですか」
と言った車の汚れに注意を向け掃除させる山添くんの適当さもおもしろかったし、それに釣られる藤沢さんもかわいいと感じた。
「パニック障害の人は平日やる気なくて土日に出勤したくなるの?」
「PMSだからって言葉選ばなくていいわけじゃないですから」
このやり取りも2人の病気をユーモラスな感じで描いており、それはそれまでに丁寧に描写してきたからだろうし、やはり作品全体をとおして言えたのは2人の会話がとても愛おしかった。
またプラネタリウムの企画も昔の担当者が書いていた台本をもとに2人で話し合いながら進めていき、仕事に対してやる気がなかった山添くんが生きがいを見出していく様子にも心を動かされるものがあった。

夜が存在しなかったら地球の外の世界に気づけなかった。この考え方がとても素敵だと思った。
夜明けはいちばん暗い時間らしい。
そういう暗さのなかで彷徨っていた2人だから、自分の外にいたお互いに気づき、お互いの道標になることができたのではないだろうか。

依存しているわけでも無関心すぎるわけでもない友達以上恋人未満の2人の絶妙な関係にとても癒された。恋愛を期待していた自分もいたけれど、藤沢さんが会社を変えることになったときの山添くんの反応もその絶妙さがとてもよくあらわれていて、2人のさっぱりした関係性が観ていて愛おしかった。
まだ理解度や認知度も低い病気を抱える人や日常とどのように付き合っていくのか。心配されすぎるのもされなすぎるのも大変で、そこの絶妙なバランスが救いになるのだろうなと思った。

とてもおもしろかったです。
あおは

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