織田

ある用務員の織田のネタバレレビュー・内容・結末

ある用務員(2020年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

芋生悠さん出演作とのことで鑑賞。監督が『ベイビーわるきゅーれ』の阪元監督ということだけ把握して観たんですが────

面白かった!これぞ楽しい殺し屋映画!

自分の場合こういう映画は「誰が一番強いのか」が楽しみとしてあるんですけど、「強い人」の予想をして、なおかつそれが割といとも簡単に銃弾で覆されるのが楽しい。短い時間でいろんな人が出てくる中でそれぞれのキャラクターに存在感があり、各人に強さのパラメーターを推し量りながら、興味を強く持ちながらのめり込んでいった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

まず前半戦で印象に残ったのは村野(一ノ瀬ワタル)。何事にも動じず泰然自若な振る舞いは(動き過ぎるように見えた)ボスの西森よりも強そうで、小物感は皆無。そんな彼は鉄砲玉として扱われると初めて狼狽した素振りを見せ、憤慨し、"強くない"一面を垣間見せ、捨て駒とされて物語から退場する。いや、こいつめっちゃ強そうなのにここでいなくなるんですか…。

その村野を駒として扱った西森も中盤で万事休すわけですが、筋の通った死に際にうかがわせたのは親分としての器量。で、西森を撃った鈴木とかいう真島の側近はおそらく作品内でも戦闘力の低い人だと思うんですけど、西森銃撃時のはしゃぎようといったら…さらにそこから本田に取り入ることができたと勘違いする様よ……最期は余計なことをほざいて始末されるしょぼさまで期待通りで笑った。

そして。
本田さんに招集をかけられた殺し屋大集合のパートです。

?!?!?!?!

ベビわるの2人が出てきて「?!」が頭の中を占拠。これ事前に知らなかったからぶち上がりました。しかも尺が長い。一番長かったのでは。激あつ。相棒が倒されたことを伊澤彩織が悟ったあたりからは特に、主人公の座が入れ替わった感覚すら受ける。

咬ませ犬っぽさを自覚すらしている連続殺人犯(?)の彼に始まり、稲岡の漢気、ベビわる2のゆうりとまことを彷彿とさせるような叙情的雇われ殺し屋の2人まで、アサシン一人一人の背景というか事情が炙り出されていて本当に楽しい。飄々と相手を始末していく血も涙も通じない系の本田が報酬ケチって理不尽に源さんを撃つのも意味不明でさすが過ぎる。

あと、学校関係者でいうとヒロくんは本当に無慈悲の極みでした。ユイを守ろうと彼は序盤からヒーローになるための下地を積んでいくんですよ。ヤクザだらけの中で。あれだけ一生懸命彼女を守ろうとしていて、それがこちらにも伝わってきて、しかもちゃんと強い。こういう人に最後に勝ってほしい。そう思っていました。
にもかかわらず、彼は廊下に沈みます。亡骸は(序列低めの)殺し屋たちと廊下に据え置かれます。ああ無情。

加えて浪岡一喜が演じる体罰教師にも「守る」理念があって、こちらも無慈悲な形で最期を遂げました。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

周囲(というか主に敵)が濃いゆえに福士誠治の主人公・深見は結構存在感が薄く、また「守られる」ユイも復讐の渦巻く真島の家に生まれた宿命についてどう行動したいのかいまいち分かりづらい。翻弄され続けていたという印象が強かったです。
とはいえ最後に二人のしっとりとしたシーンを入れたことで満腹感。爽快さも笑えるところもシリアスなところもあり、総じて「楽しい」と感じる映画でした。
織田

織田