whiskey

AIR/エアのwhiskeyのレビュー・感想・評価

AIR/エア(2023年製作の映画)
3.2
思った以上にシンプルなストーリーの映画だった。予告編から想像される話以外はほとんど出てこない。ナイキのエアジョーダンが生まれるまでを描いた作品。

それでも楽しめたのは、一つは1984年当時を忠実に描いた風景、衣装&意匠の良さだと思う。冒頭、当時のリアルな記録映像と混在させるように本作の映像表現が展開するのだけど、違和感がない。良い意味で、それこそ「刑事コロンボ」とか(あれはもっと古いけど)昔の映画やドラマを見てるみたい。主要な男性登場人物はみんな服装も髪型もダサい笑。「アルゴ」の時もそうだったけど、こういう時代描写にベン・アフレックはこだわりがあるのかも。良いと思った。

音楽もダイアーストレイツの「マネーフォーナッシング」から始まって、1980年代の音楽が分刻みでかかる感じ。シンディ・ローパーとか、そういういい意味でベタなやつがたくさん。タンジェリンドリームとかも流れてきて嬉しかった。選曲はすごくよかったと思う。

もう一つ、脇役的存在の実在人物たちのエピソードが個人的には面白かった。

エアジョーダンのシューズデザインを手がけたピーター・ムーアという人は、ちょっと頭の薄くなった小太りの、でもチャーミングなおじさんで、彼に相談しないとシューズデザインは始まらない、という感じで社員たちから信頼されている。哲学者みたいなデザイナーで、劇中、マット・デイモン演じる主人公がエアジョーダンの構想を話しに行くと、即座にコンセプトを理解し、「つまりシューズ自体がその選手のアイデンティティそのものを表現しているような、しかもかつてない美しさを備えているような、そんなシューズをつくるということだね」みたいなことをすぐに言う。かっこいいと思った。

あと、ナイキとマイケル・ジョーダンの縁を作ったジョージ・ラヴェリングという人がいて、彼がマーティン・ルーサー・キングとの信じられないようなエピソードを語る。おいおいウソだろと、主人公もツッコむが、エンディングの時にそれが実話だったことが明かされる。このエピソードは、マイケル・ジョーダンにナイキとの契約を決意させるプレゼンシーンにも繋がっていて、なかなか面白い。

ということで、これから観る方はこの脇役2人のことも念頭にちょっと置きながら観てほしい。

まぁ、感想はこんなところで。

あと、どうでもいい話だが、本作を劇場で観て、ああAmazonがつくった映画なんだなと思ってたら数日後、Amazonプライム見放題リストに本作が入ってて驚いた。劇場で観たかったからいいけど、早く言ってよ笑
whiskey

whiskey