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THE FIRST SLAM DUNKのwhiskeyのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
3.9
劇場で鑑賞した。評判通り、観てよかった。
スラムダンクは連載中に読んでいた世代。あと一応、バスケ経験者です(補欠)

この映画が始まって、最初に惹かれたのが「音」だ。ボールが体育館の床に弾んだ時のドリブルの響き。バスケ独特の重い音。あるいはバッシュが床を擦れる音。あるいはシュートしたボールがリングにもボードにも触れず、ゴールネットだけ揺らしてきれいに入った時の「ツァッ」って音。みんな大好きだよね。本作ではすべてリアルに再現されていて気持ちよかった。バスケの音って、改めて聴くといいな。



さて、ここからはマニアックな考察。ややネタバレあり。「ドカベン」との関係性について。

山王戦が映画化されると聞いて、真っ先に思い浮かんだのは、伝説の漫画「ドカベン」31巻だ。井上雄彦氏は、ドカベン好きを公言していて、スラムダンクはドカベンを意識して描いていたことも語っている。生前の水島新司さんとの対談も行われていて、井上氏のドカベン愛が感じられて貴重だ。

で、ドカベン31巻というのは、甲子園の決勝戦で、土佐丸高校との死闘の合間合間に、主人公たちの過去の辛いエピソードが描かれる巻だ。主人公山田太郎は、幼少期に観光バスの交通事故で両親を亡くしている。身体の頑丈な自分が妹を抱いて守り、子ども2人で生き残った。妹とは仲がいい。ピッチャー里中は中学時代、「チビ、チビ」と野球部仲間に背が低いことでいじめられた経験を持つ。体格差をカバーしようと、アンダースローに変えて変化球主体のピッチングを独学で身につける。それがチビの生きる道だと考えたのだ。そのせいで選手生命に関わるような深刻な怪我もする。岩鬼は、兄貴たちがみんな学業優秀で、母親にいつも兄たちと比較されて育った。乱暴者だが、幼い頃から母親に愛されていないような切ない気分を味わっている。

ほら。なんだか、今回のスラムダンクが描いたエピソードに似てないだろうか。なんて、まぁ考えすぎか(笑)

ただ、原作のスラムダンクでは元々、三井以外のメンバーのエピソードストーリーはほとんど描かれていないので、今回の映画のようにストーリーを紹介するのは悪くないと思った。リョータが主人公というのは意外だったけど。

あとは、動画になって、主人公たちの歩き方や体格がよりリアルに感じられて、それも新鮮だった。実写でも描けない、実際に選手として試合に参加しないと味わえないようなカメラワーク(アニメだからカメラはないけど)とかも含め、動画作りは相当大変だったようなので、これが今後のアニメ作品に影響を与えるというよりは、最初で最後の試みになる気がする。その意味でも、劇場で観てよかったと思った。

ちなみに本作は「First」なので、「Second」以降も作られると期待する声もあるようだ。その場合、主人公は赤木?流川? いや、できれば次は木暮君でお願いしたいと僕は思っている。
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