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カンダハル 突破せよのBaadのレビュー・感想・評価

カンダハル 突破せよ(2023年製作の映画)
3.3
アリー・ファザル君が大きめの役で出ていると気づいてみましたが、なんなのこの中途半端な映画。

あまりに中途半端でラストが阿呆すぎてみた後かえってあほらしくも爽やかでみてよかったと思ったけれど、所詮アメリカ映画が描くイスラム圏なんてこのていどだわね。

特に阿呆なのがISIエージェントのアリー・ファザル君で、あの立場の人物はこういう考え方する、という部分にはリアリティーはあるものの、エージェントが目立ちまくってどうするの?アホらし。
まあ、ハンサムでセクシーだから全部許されるかもだけれど。

脚本緩かったから、せめてもということで、交渉して現実だったらありえない見せ場いっぱい作ってもらったんだろうな、きっと。数少ないイスラム教徒の世界的スターの一人でもあるし。

でもさ、これ、タリバン政権になる前の時代の話なのよね。今更だけれど、作戦が成功したところで面白くは感じられないよね。先がわかってるし。

たまたまガザが大変なことになっているので巻き込まれる民衆=通訳のおじさんに感情移入はできるけど。

ラストは主要キャストの一人が亡くなるところでぶつっと切ってくれたらさらによかったかもと思いました。

にしても、この映画すごく感情移入しにくい。

唯一まともでいい人と思えるのがイランのコッズ部隊(革命防衛隊)の隊長というのがなんとも言えずダメでした。

主人公なんて、なんでみんなが助けたがるのかよくわからなかった。人騒がせだからさっさと流れ弾にでも当たって退場しとけば人的被害少なかったのに・・・

第一アメリカが核開発している時点で、対立してる国の核施設爆破するなんてダメでしょう。
亡くなったイランの核施設の職員さんが可哀想で最後まで映画に集中できなかったです。彼らなんか悪いことした?

なんとなく見るとタイムリーってところで少しスコア上げてますが、英語字幕で構わないのなら、YRFの”Kabul Express"(インド映画)を(手に入れば)DVDの英語字幕で見た方がためになるのでは?と思いましたよ。

それにしてもこの映画でもYRFの映画でも誰から見ても悪役は北部同盟の軍閥でしかも彼らを西側が支援してうまく使っているという構図は変わらないなあ。
タリバンはイスラムの解釈がへんなだけで普通の人たちだが、確かにこっちの方が悪気がない(というか自覚してない)だけやばいことは確かですが。

まあ、でも『アルゴ』よりは好感が持てる作りでした。(←特に根拠はないがブローカー風の仕事をしているおじさんのラストがちょっとよかった。)

ところでオープニングのタイトル読んでいたらシンプルに『カンダハル』で地名なんですね。イラン映画『カンダハール』と一緒じゃない、と少し気分が上がりましたが、あちらの原題は『カンダハルへの旅』でした。

あれから20年は経っているわけですが、『カンダハール』に関しては映画に描かれていない部分のほうが大事だったのかも、とこの映画を見て思えたことは見たよかったことのひとつでした。

この映画で特筆すべきことはアラビア文字のクレジットとかタイトルとかゾロゾロ出てくるところで、撮影はほぼ全てサウジアラビアロケだそうです。(どうりてアフガニスタン特有の綺麗な光の映像がないわけだ。)
ただ、そのせいかイスラム教徒の登場人物の人物造形はけっこうまともで、それがよかったと言いたいところですが、逆にアクション映画のハラハラドキドキを薄めていました。

騙されて雇われたアフガニスタン人の通訳はともかく、主人公のお仕事(人物としては悪い人じゃなさそう)に一ミリも共感できないのは娯楽映画としては苦しいです。
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