けんたろう

古の王子と3つの花のけんたろうのレビュー・感想・評価

古の王子と3つの花(2022年製作の映画)
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甘え、甘え、クソ甘え、三つの物語り。


たゞ、面白え。
成るほど三つとも、ガキに読み聞かせる絵本の如き甘さではある。然し、斯ういふ正に童話といふものは、観ると虜にさせられちまふもんである。其れは異世界の物語りであるからなのか、或いは皆なが憧れる王子と姫の物語りであるからなのか、将又た神話の頃から脈々と続く王道の物語りであるからなのか。一体何うなのかは判らぬが、心躍らせられることに関しては、少年時分から変はらねえ。大好きだ、古の王子どもめ。劇場に居たちびっ子共も楽しんでゐたご様子。素晴らしい。子供を楽しませられるコンテンツこそ、最高である。
まあ描かれる舞台、境遇、闘ひ、勝利に関しては三者三様であつた。何奴も此奴もクソ甘え展開で同じやうなお話しであるが、其れでも最後まで観られたのは、矢張り然ういふ違ひが有つたからかも分からない。

無論ストオリイばかりでなく、ビジユアルや声なども魅力的であつた。
壁画や切り絵などを用ゐた、趣向の異なる三つのアニメエシヨン。矢張りオスロの絵は好い。ユウモラスなのは勿論、他のものには無い不可思議な魅力が有る。
又た、声に関しても惹きつけらる。今度は吹替版で観賞したのだが、有り体に申せば、何んだかヘンテコリンなんである。ミスマツチな気さへする。だがマツチしすぎてゐると、此方の這入り込む隙が無い。ズレた箇所にこそ、観る者は惹きつけられるんではあるまいか。
兎に角、絵も声も奇妙である。ストオリイ・テラアの髪型なんか、何んぢや此れはである。故に面白い。故に惹かれる。

繰り返しに依るユウモアなんかも、観てゐて非常に楽しい。
ユウモアが有り、魔力が有り、其んな魅力の有る一作であつた。


因みに、久しぶりに行つたYEBISU GARDEN CINEMAも相変はらず素敵な映画館であつた。近いうちに復た行きたし。