チッコーネ

ジャングルのけもののチッコーネのレビュー・感想・評価

ジャングルのけもの(2023年製作の映画)
3.0
クラブという空間に一定期間浸ったことのない者は、その作用を理解することもできないだろう…、しかし例えば90年代東京の某クラブを通過した世代の中に、未だ当時の価値観から抜け切れない人々が数多く存在していたりもする。


「待つ」という言葉は動詞だが、実際の行為としてはひたすらに受動。
「クラブに行く」のはひとつの行動であり体験だが、それが習慣となればルーティンにも堕ちゆく。
待っているだけで素晴らしいことなど起きるわけがない、かといって男性主人公の「凡庸な愛など論外」という価値観が理解できないわけでもない。
長い時をかけ最優先したものが、実は我執に過ぎないとは皮肉だが、私も長年、クラブに身を置く者として既視の感や共感を抱く部分も多かった。

1979年から始まる冒頭は確信犯的にチープなのだが、物語が進むに連れ照明に表情が生まれてくる。
同じスタイリングはほぼないヒロインの、パーティスタイルを眺めるのも楽しい…、またエキストラたちは「着飾るディスコ」から「ドレスダウンしたクラブ」への変遷をしっかりと表現している。
音楽はイタロディスコに始まり、恐らくオリジナルのテクノ劇伴へ移行。
ベアトリス・ダルの禍々しいドアビッチ(というかドアウィッチ)ぶりは魅力的。