冒頭7分間、長回しによる衝撃の銃撃戦映像。
現在開催中の『ジョニー・トー 漢の絆セレクション』内の一作として現在劇場でリバイバル公開中の作品。2004年、香港を舞台にしたクライム・アクション映画です。
1/26(金)公開『ジョニー・トー男の絆セレクション 4作品』公式サイト
https://johnnieto-films.com/
パリを舞台にした映画はパリそのものが俳優のような映画が多くありますが、本作は香港という街そのものが俳優のような映画。ざらついたフィルムの質感で映し出される古き良き香港の雑然としたアパート群の映像が、汚くも美しく感じました。
そんな香港で繰り広げられるジョニー・トー監督によるハイスピード・アクション映画であり、香港ノワール。
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本作を有名にしたのが、冒頭7分の大規模銃撃戦の長回し映像。
ビル群の市街での銃撃戦といえばデ・ニーロとアル・パチーノの「HEAT」が際立っていますが、本作の銃撃戦も凄まじい迫力がありました。
「HEAT」はロサンゼルスの高層ビル群に響く、高い音色の銃撃音が印象的でしたが、こちらは集団で演技をしながらの銃撃戦、役者の演技をカメラが追っていきながらの集団戦なので、演者やスタッフ、誰か一人がミスすると一発でアウトです。
また、犯罪集団と警官隊が車を盾に撃ち合うのですが、互いに車のドアやボンネットに小さいコップ大の凹んだ穴がボコボコ空いていき、マシンガンで撫で撃ちすると横一文字に穴が空いていくっていう凄まじさ。
あまりにこの銃撃戦がすごかったので思わずメイキングまで観てしまったのですが、入念なリハーサルの上で、一発撮りしたっていうんですから驚きだし、なんならこのシーンだけでこの映画を観た価値はありました。
メイキング: https://filmarks.com/movies/53344
そして映画は、冒頭いきなりの銃撃戦から、そのまま巨大な高層アパートでの籠城戦に。
九龍城のような古い香港の、蜂の巣の断面のような迷宮アパートで、昔の上海にあったような、物干し竿がが路上に飛び出た古いアパート。その建物内の一室に立てこもる犯罪集団と、それを包囲する警官隊の睨み合い。
警官隊を率いる若き女性のレベッカ(ケリー・チャン)は警官にワイヤレスカメラを装備させ、『偽りのない情報開示と警官の活躍』をアピール。一方の犯罪集団を率いる切れ者のリーダー、ユアン(リッチー・レン)は、携帯やPCを使って建物内で警官が苦戦する映像を流す。
銃での撃ち合いから双方マスコミを使った戦い、まさに『ブレイキング・ニュース(ニュース速報)』を取り合う主導権争いに。
若き切れ者リーダー同士の頭脳戦の結末はいかに。
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ということで感想ですが、いやー、こんな映画があったとは!っていう、うれしい驚きがある作品でした。
長回し銃撃戦も凄まじかったですが、それも含めて、ジョニー・トー監督による香港ノワールの世界観。
警官隊の現場リーダー・チョンの過去の経歴、若き女性レベッカが警官隊を率いる理由、犯罪集団のリーダー・ユアンの犯行目的等、普通は序盤で説明があるはずの背景説明は(ほぼ)一切なし。
ど派手な銃撃戦から籠城へ、とにかくリアルタイムに現場の時間だけがハイスピードで流れていき、まさに『息つく暇がない』という表現をそのまま地で行くような映画でした。
かといって意味不明にはならず、部下への指示の出し方や承諾する側の仕草、人質にした家族の子どもたちへのユアンの接し方など、セリフとして説明させずに観た人に理解させる演出も素晴らしかったです。
また、映画あるあるの『あー、この人死ぬんだろうな』っていう、いわゆる”死亡フラグ”をことごとく無視して進んでいく意外さや、安易なハッピーエンドにもしない唐突感のある終わり方にも驚きがありました。
他にも他の映画では見ない独自の演出がいろいろあり、面白いだけではなく、映画の知見が広がった一作で、円盤を手元に置いておきたくなる作品でした。
今回、先日の「レザボア・ドッグス」のように、リバイバル上映のためのパンフレットがあり、早速購入。他の作品も観てみたいと思います!