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窓ぎわのトットちゃんのBATIのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.6
アニメではあっても、もう演出はやってることほとんどビクトル・エリセなのでは?ものすごく丁寧な作品で、アニメオタクが喜びそうなこと一切やらない、反戦というテーマだけでなくメチャクチャ硬派な作品だった。予告でそんなことわからないよ...。戦前から戦中に入って男の人たちが減っていくのが静かに怖かった...。

トットちゃんの作画が、この姿の生命が自分なりに天真爛漫でも全身全霊で世界と対峙しているというもので、凄かった。所謂作画マニアというかよく動く絵だけ褒めてる人間には届けようとしていないものだ。「この世界の片隅に」が苦手だった方は気にいるのではないかと思う。それくらいに静かにドラマが動く。生命の重さ≒軽さであるといわんばかり。勿論作劇場ドラマ的なシーンはあっても、ドラマに戯画化することを拒否する。それでいて夢のシーンの手が走り過ぎないそれでも異常な作画によって描かれる躁性悪夢性、高度な技術と引き算の演出しかない。

トットちゃん、チンドン屋の演出、あれほとんど大林宣彦だな。大林監督もご在命であったら本作を観てほしかった。

トットちゃん、彼女が彼を木の上(概念としてのトットちゃんのおうち)に連れて行きたいのは彼女のパーソナルスペースに連れていきたいという行為で、単に小児麻痺の子に手を差し伸べているという次元のものではないんだよね。私が(無自覚に)愛しているこの光景を君にも観てほしいということ。

なんか日本の戦中を日本の外側から俯瞰してるような映画だった。ある意味日本の作品のようでそうでないような。懐かしいようで見た事のない映像だった。

役所広司、声だけでも「名優」...。

戦前/戦中/戦後映画、今作らないともう語り継ぐ方々もいなくなるという危機感から増えているのだと思うけど、特にその危機感を持っていたのが晩年の大林宣彦だったと思う。チンドン屋の演出、あれほとんど大林宣彦。大林監督もご在命であったら本作を観てほしかった。
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