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窓ぎわのトットちゃんのユーライのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.2
予告を見て「こ、これはインピオじゃあーりませんか」などと懸念していた私のカスみたいな邪を粉々に打ち砕く、力ある作品だ。驚嘆したのは、プール開きにてすっぽんぽんになる児童らはともかく、トットちゃんの丸ポチみたいな乳首をしっかり描線しているカット。深夜アニメで乳首券が発行されてはしゃいでいる輩をハナから相手にしていない目を見張る意識の高さだ。これと『ポールプリンセス!!』が同じハコで絶賛上映中なのだから、アニメーションというのは何だかんだ豊かな表現媒体と思うのです。ただ、余りにも志が高過ぎ、ご立派過ぎて入り込む余地がないと感じたことも事実だ。校長先生を始め、大人の一面的ではない複雑怪奇を仄めかす態度はいいけど、子供社会の残酷さには些か無頓着じゃなかろうか。窓際に追いやられても皆いい子のトモエ学園。いやそうなんだろうけど、いじめの一つや二つは平気であるでしょうよ。「これでさえ」障害者を類型化した「聖なる白痴」の病理を垣間見てしまうのは私が病気なだけなんでしょうか。それに、他校の糞ガキが放つ「穀潰し」なる言葉で思い出したのだ。昭和十年代、戦争に向けて突き進むニッポンの片田舎で秀才だった青年が村人三十数人を一夜にして手に掛けた犯罪史に残る凶悪事件――通称「津山事件」を。犯人である都井睦雄が暴発した原因の一つに、持病によって兵役から除外されたことが推測されているが、この『トットちゃん』と数年のズレはあれど、ほぼほぼ同じ時代背景なのである。片や都会で理解ある周囲に恵まれてすくすく成長した少女がおり、遠く離れた岡山ではアイデンティティを否定され鬱屈を溜め込んだ挙句に大惨事を起こした青年がいた訳だ。そういう時代だった。そこまで考えて、何だか暗澹たる気分になってしまった……ってこれ全然映画と関係無いな……。
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