あや

さらば、わが愛/覇王別姫 4Kのあやのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

レビューすることが憚られるくらい凄まじい映画だった。

蝶衣が指を切り落とされ母親に捨てられてから死ぬまで幸せだった瞬間は少しでもあったのだろうか?とずっと考えてしまう。
地位も富も名声も得た青年期よりも、おそらくあの虐待のような厳しい養成所で小樓と過ごした日々の方が蝶衣にとっては幸せだったのではないかと思う。

定められた運命には逆らえないという師匠の言葉を受け止めながら生きる蝶衣が苦しいくらい辛い。
虞姫を演じるにあたって、男であることを捨て演じることに徹し、権力者からは男娼として扱われ自我が無くなっていく中で小樓の演技と現実を一緒にするなと言う言葉はあまりにも酷い。
蝶衣は小樓を京劇を愛していたけれど、最後まで蝶衣を小豆として一番に愛してくれた人は誰も居なかったことも悲しすぎた。

小樓や小四など幼少期から登場してきた人物は、汚さを覚えるなどして時代の波と共に変化しながら大人になっている中で、蝶衣だけはずっと変わらなかった。
小樓を想う気持ちも京劇への熱量もずっと変わらず、変われずにいる蝶衣にとって現実世界でシラフで生きていくのは相当な辛さだったのではないだろうか。

文化大革命の小樓の裏切りは、小樓にとって京劇は人生の全てではなかったことをさらに物語っていると思う。(ただ、あの状況下で自分の保身に走らずにはいられないだろうが。)
菊仙の最後がやり切れなかった、、、
余談だが、文化大革命時代は各地でたくさんの人々が晒し者にされ処刑されたため、文化大革命が終わってからも処刑執行者達は罪に問われず日常を生きていると思うと法とは、罪とは何か?と問いたくなる。

文化大革命も終わり、2人は11年ぶりに覇王別姫の演目を行うことになったときに、物語のカギとなっていた刀がこう使われるとは、、、
そして最後の最後に「小豆」と、、、
運命には逆らえない。
蝶衣の逆らえない運命はこういうことだったのだろうか。

中国激動の時代の歴史と共にもがきながら生きる登場人物達を見事に描いた素晴らしい、どうしようもなく辛い映画でした。
あや

あや