arimasou16

ミッシングのarimasou16のレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.5
ヤバいものを見てしまった。終幕後に笑ってた人がいたが、こんなの笑うしかないです。人の悪意に当てられすぎて、絶望の底に落とされた気持ちを回復するための本能的に出た防御反応だと思います。

碁盤切りの他の方の感想を見てたときに、ミッシングも良かったみたいなのがあったので、上映劇場が少ない中、都合を合わせて見たんですけど、その程度の労力を払った甲斐はありました。今年一番心を抉られた作品はこの作品で決まりです(関心領域もヤバそうだけど)

例によってどんな内容か調べずに見たんですけど、冒頭で大体分かります。普段、Xとか人の悪意を目にすることに慣れてる人なら、予想通りに話が進みます。絶望的なほどに。

精神的ホラー映画というんでしょうか、兎に角、エグすぎます。そんなシーンばかりなんですが、個人的に一番目を背けたくなったのは、石原さとみが、記者が乗った車を引き留めるシーンでしょうか。

長澤まさみのMOTHERも観たあと後悔したんですけど、あれは特殊なケースを見せられた上に、どないしろっていうの?って気持ちで終わったんですね。でも、こちらはダウンにはなるにはなるけど、まだ身近で救いを感じるんです。

まぁ、細かいところ言うと感情的な母親と、冷静にそれを支える父親ってのは、あまりにもステレオタイプ過ぎやしないかと思いましたけど。

BGMが殆どないのも良いです。こんなものを見せられて舐めたラストなら監督の首絞めてやろうかと思いましたけど、納得のラストで良かったです(?)。

石原さとみさん、コメディエンヌのイメージが強いんですけど、漫画、アニメのようなオーバーでない、リアルな演技が凄いです。

マスゴミが!SNSが!とかって気持ちもありますが結局、YouTubeで再生数を稼いでるものってこういうものだから、人が見たいものを提供してる、それを見てる私たちってのは変わらないですよね。

落ち着いた長期的な視点に立った深い考察や専門性こそ、これからのマスメディアに求められると思います。また、見る私たちも、あなたのおすすめばかり見たり、反対意見を黙殺するのではなく、自分にとっての残酷な現実を受け止めていける精神力、理性を保ち続けていきたいものですね。

帰りはうぴ子の「人殺し」を聴いてました。そして、昨日まで青臭い事ばっかり唄ってんな、と思って購入してなかったですが、まとめ買いしました。

でも、こんな映画見たあとですけど、それでも人類の道徳とか良識は少しずつ良くなってると私は思います。

点数つけのやめようか、迷ったんですが娘を持つ父親として、でもあまりにエグい作品ということでの点数です。妻と見たい気もするけど、見せてはいけない気もします。
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