このレビューはネタバレを含みます
舞台挨拶で、濡れ衣を着せられる話と知りました。初めは、碁の才能に嫉妬に狂ったサリエリな話かと思ったりしたけど、おっさんズラブだの言ってるので、どうも違うっぽいです。明るい舞台挨拶とは打って変わる、という司会の前振りと、あの孤狼の血の監督と知って、どんな映画なのかと、ワクワクしながら本編は始まりました。
最初は割と和やかな感じで話が進むので、言うほどじゃないか、という安堵感がありました。この睦まじいおっさんラブを愛でていたいと、願いつつも冤罪事件は起きてしまいます。
そして、そこから一気に血生臭い話になっています。これがテレビドラマやら、 山田洋次監督なら、大円団の保証ありでストレスなく見続けられますが、キョンキョンの遊郭を足抜けしたやつを半殺しにしたシーンなどが、ブローとなって効いてきます。
---以下ネタバレ---
えん罪で主人公が辛い目に合うって、やっぱりモヤモヤするんですよね。
なろう系に甘やかされ、今となっては、小公女セーラを見れる忍耐力もない私には数十分が何時間にも感じて、時間の経過につれ、イライラしてきます。
そんな重苦しい中、斎藤工は長考をかましちゃってくれます。そして、今の御時世、わざわざ必要のない首ポトリまでしてくれて、バットエンドの予兆か思わせて、ただでは死んでくれないです。
中川大志が、これまた人間臭いというか、気持ちはよーくわかります。いや、草彅が追い詰め過ぎなのか、今のゆとり世代にはもっと逃げ道を与えなければ行けないですね。
最後も、涙ぐむだけでは一回は知らない振りするあたり、おいおいと突っ込みましたが、今更、打ち明けられないですよね。
せめて、身売りされたことを知ったときに、全て打ち明けていれば、また展開も違ったと思うんですよね。
遊郭の門は締まり、その後にノコノコ表れる大志。現代的な感覚だと、利子付けて返せば良くないみたいに思うのだけど、草彅含め全員、金を返したところで、身売りの話がチャラにならないと思ってたはずなんですよね。
それだけに良く大志の首を刎ねなかったなぁって思います。私なら貴様のせいで、娘の純潔は失われることになったんだぞ!と。
また、絶対、結婚しないですね、父親を盗賊扱いしたんですよ、そんな男への恋心なんていっぺんで冷めますよ。
最後、何のために草彅が家を出たのか分かりませんでしたが、掛け軸を売った金で、斎藤工の代わりに仕事を失った人たちに金を渡しに旅立ったってことですかね。
正直、それは草彅の役目でなく、領主がやることと思いますが、水清ければ魚棲まずって観点は興味深いですね。
不正はあってはならないし、斎藤工は死んで当然なんですけど、清廉潔白を硬直なまでに突き通そうとするとやはり、良いこと尽くめではないんですよね。
今日の社会問題、こういう視点を持ちたいですね。そういう意味では、まさに草薙のような政治家を待ちわびたいです。果たして石丸伸二元市長は、浪人前なのか、その後なのか。
いやぁ、斎藤工が死ぬはずとは思ったんですけど、娘は貞節を失い、大志も首を斬られるバッドエンドが起こるんじゃないか、最後までハラハラさせられました。とても面白かったです。